初期医師が病院見学に行くべき理由!働く環境改善や知見獲得の秘訣は!?

実は研修医になってからも病院見学は価値が高いんです。医学生時代の病院見学においては、物理的には見えていても認識はできていないことが数多く存在します。社会人になって働いてからの病院見学は、見学する側の目が成長しているので、より多くのものが見えるようになっています。

初期医師が病院見学に行くべき理由!働く環境改善や知見獲得の秘訣は!?

目次

  1. 筆者は何者?
  2. 見学に行く人は優秀で向上心がある
  3. 進路選択の後悔を防ぐ
  4. 三年目以降はフェアな目では見れなくなる
  5. 他病院の研修医と自分を比較することも大切
  6. おすすめな見学戦略はコレだ!
  7. 病院見学は自分のための先行投資

筆者は何者?

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
東京じゃない街の30代フリーター麻酔科医。既婚、子持ち。初期研修は田舎のハード病院、その後ハード後期研修を経て疲れない重視のフリーター麻酔科医生活中。三次救急病院でも仕事するので初期研修医の先生方と現場でご一緒することも多い。

見学に行く人は優秀で向上心がある

医師になって以降も病院見学に行く方は、概ね優秀な印象を受けます。きっと、向上心があるからですね。

そもそも人は同じ環境に留まろうとする習性があります。医師業は同じ環境に留まると、診療技術自体もその環境で習得できる範囲のものに限られていきます。

そのようにならないためにも、定期的に環境を変えることは非常に大切だと思います。これに気づいている時点で、既に一歩リードしているといえるでしょう。

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
この点、医局制度は自分で環境を変えられない人でも自動的に環境を変えてくれる良システムといえますね。

進路選択の後悔を防ぐ

後年、医局に所属していることに迷いの気持ちが生まれた際に、病院見学の経験が生きます。三年目入局者は以降、基本的に医局を辞めるまで比較的限られた環境の中で働くことになります。

二年目までの間に病院見学を重ねたうえで、客観的な視点で入局の選択ができていたのであれば大丈夫です。もし医局で辛いことがあっても自分がそこにいる理由がしっかりしているので、軸がブレることはないでしょう。

しかし、あまり見学をせず流されるままに入局した場合は、まさに井の中の蛙大海を知らず状態です。自分がどうして医局にいるのか、他の病院のほうが良かったんじゃないか、と悩むことになり、メンタル負荷が高くなることも十分に考えられるでしょう。

三年目以降はフェアな目では見れなくなる

我々ははじめに教わった知識を「正しいもの」として学習します。これを「すりこみ」と表現しますが、三年目以降のすりこみから逃れるのは不可能に近いと考えています。

初期研修中にも一定の刷り込みはありますが、各診療科の専門家から見ればその程度は知れています。しかし、各科専門過程が始まると、はじめに教わった専門領域の知識や慣習が正義として固着してしまいます。

この状態で病院見学に行けばどうなるでしょうか?既に自分の中である種の「正義」が確立した状態でヨソをみることになり、どうしても批判的な目線が入ってしまってヨソのいいところが見えなくなってしまいます。こうなる前に是非、日本中のいろんな流儀を見て吸収することをオススメします。

筆者
筆者
私は麻酔科ですが、学生時代に見学した先の麻酔のやり方を専門医取得後にも思い出して応用する機会が何回もありました。

当然、当時は見学先の先生の意図などわかりもしませんでしたが、専門家になって思い出してみると意図が想像できるようになっておりました。更に自分の経験や時代の変化を加味したアレンジを加えたりして、診療の手数が増えることにも繋がりました。

三年目以降はある程度自分の型ができてしまっており、人の診療を吸収する力は損なわれていた自覚があります。

他病院の研修医と自分を比較することも大切

研修医として入職してからは、他の病院の研修医の情報を得る機会はあまりないでしょう。病院によって研修医に要求される水準には大きな差があり、ほとんど勉強しない病院もあれば、診療の歯車としてガンガン活躍している病院もあります。

大事なことは、自分の病院が他と比べてどのくらいの水準なのかを知ることです。自分では頑張っていたつもりでも、三年目になって就職した際に他院研修の人とのレベル差に愕然とする、といった話はよく聞きます。そしてこのレベル差は三年目以降の差にもつながっているように感じます。

どの条件をも満たす完璧な臨床研修病院はありません。そのため、どの病院育ちの研修でも弱いところが必ずあります。病院はそうそう変えられませんから、自分の弱点を他院研修医から教えてもらって、自力で克服しましょう。他院で見たい良い点や真似できそうな点は積極的に取り入れると尚良しです。

おすすめな見学戦略はコレだ!

地域をまたぐ

研修医になってから見学に行く場合は、就職を見越して診療科を決めてから行く人が多いかと思います。大都市圏ほどの大きい地域ごとに、「○○科は▲▲大学が強い」「★★病院が強い」のような強弱があり、基本的には強いところに人が集まって地域の医療水準を規定するものと思います。

これには注意が必要です。なぜなら、都市圏内で複数見学しても、同じ宗派の派生を見るだけとなる可能性があるからです。もっと言えば、その都市圏の科の医療水準が全体的に高くない、ということもあり得ます。

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
全国各地いろんな都市圏の病院を見に行くことで、その診療科を様々な視点から捉えることができるでしょう。

いろんなタイプの病院に行く

病院の医師募集形態は様々で、医局からの派遣で成立しているところもあれば、俗に「ブランド病院」と言われる、有名病院として名を馳せて人を集める病院もあります。

ブランド病院には、ガツガツした意欲のある医師が(薄給でも)集まる傾向があります。就職の可能性を考えていなくても、社会勉強として是非一度見学に行くことをオススメします。果たしてブランド病院の医療水準は高いのか、ブランドとはなにか、職場の雰囲気、(いる場合は)お局の存在など、学ぶことは多いでしょう。

逆に場末っぽい、一人部長や少数でやりくりしている病院や単科病院なども、もし見学の機会があれば、是非行ってみて下さい。すぐに就職せずとも将来の選択肢を広げることになるでしょう。とくに「小規模病院でいかにやりくりするか」は大病院の診療とは違う難しさがあり、そこにツボる人もいると思います。

病院見学は自分のための先行投資

正直、病院見学をするのは腰が重たいですよね。気持ちはとてもよく分かります。

また、就職先を決めるだけであれば就職直前に行けば十分かと思いますが、研修医の先生方はあと何十年も職業人生があります。是非、今しかできない初期投資として病院見学を頑張ることをオススメします。

時間と旅費を投資する価値は十分高いです。研修医はフリーな立場で日本中の病院を見て回れる最後の機会なのですから、これを逃す手はありません。

KCP ニッチな麻酔科ライター

この記事のライター

KCP ニッチな麻酔科ライター

KCPはフリーのライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。感想、こんな記事書いてほしい、麻酔科の専門的なご質問、iCoi以外での仕事依頼などはTwitterのDMから。https://twitter.com/KCP58227768

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