4月から初期研修医になるあなたへ!成功するための現実的なポイントとは?

4月から研修医になる先生方の大半は、初めての社会人生活を始めることになります。期待や不安も大きいことでしょう。そこで、私が失敗から学んだことや後輩を見てきた傾向から、効率的に研修医時代を過ごすための現実的なアドバイスをいくつかお伝えできればと思います。

4月から初期研修医になるあなたへ!成功するための現実的なポイントとは?

目次

  1. 筆者は何者?
  2. はじめはメンタルを死守すべし!
  3. 日本語の教科書を早く読み、とにかく体験の場に立つべし!
  4. 医学書購入は計画的にすべし!
  5. お客様にならないよう心がけるべし!
  6. 看護師さんと雑談をすべし!
  7. メモアプリを使うべし!
  8. 研修医時代の経験は生涯の医師人生について回る

筆者は何者?

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
東京じゃない街の30代フリーター麻酔科医。既婚、子持ち。初期研修は田舎のハード病院、その後ハード後期研修を経て疲れない重視のフリーター麻酔科医生活中。三次救急病院でも仕事するので初期研修医の先生方と現場でご一緒することも多い。

はじめはメンタルを死守すべし!

誰でも最初は慣れない環境で働くことに疲れを感じます。自分自身に精神的な不調の要因がないと思っていても、メンタル面での不調をきたしてしまう方が一定数いることも事実です。

一度、メンタル面の問題を抱えたと判断されてしまうと、その後の研修医生活が変わってしまうかもしれません。病院にとっては、メンタル面で退職する人が出るという実績は望ましくないため、早く家に帰ってもいいし、つらければ仕事をやらなくてもいいし、興味があれば教えるよ(黙っていたらこっちからは教えないよ)、というように扱われることもあるかもしれません。これは非常に勿体ないことです。

職場に慣れるまでの期間は、計画的に休むことが重要です。疲れていると、自分が疲れていることに気がつきにくくなります。職場を休むことより調子を崩してしまうほうが影響が大きいため、心配することなく休むことが大切です。

日本語の教科書を早く読み、とにかく体験の場に立つべし!

研修医時代の教科書は、まずは、 日本語で書かれた、研修医向けの、現場で使える系の本を、早く大量に読みましょう。量こそ正義です。全部覚えなくてもいいので、どこに何が書いてあるかを知りましょう。

そして最低限の知識をもって、とりあえず診療に参加して実作業に参加することが大切です。難しい教科書は何が重要であるかを理解してから熟読すればよいのです。体験に基づいて、勉強したいという気持ちで読んだ知識はどんどん身につきます。

医学書購入は計画的にすべし!

研修医の先生の一部は、焦って医学書を買おうとします。

基本的な本を読んでいるかどうかは指導医からすると案外バレバレなのですが、たくさん買ったらからといって優秀になるわけではありません。特に専門家向けの本は買っても無駄になることも多いと思っています。

まずは一歩踏みとどまって、お金を掛けずに読める範囲のものを制覇しましょう。まずローテート中に読むべきは、診療科ごとのガイドラインです。各科診療の大部分はガイドラインが整備されており、かつほとんど無料で読めるはずです。

あとは研修医の部屋に転がってる本、前のローテーターが買った本あたりで十分時間は足りなくなります。それでも足りないと思ったら自分で本を買えばよいと思います。

筆者(KCP)
筆者(KCP)
ちなみに買って読んで中古で売る戦法もとてもおすすめです。早く売るために早く読む癖がつくので、教科書をいっぱい読むことに繋がります。

余談:論文や英語本は効率が悪い

私は、研修医の時代にEvidence Based Medicine (EBM)が大事だと思い、英語論文に時間を費やしたり、英語の教材を読んだりしました。が、非常に効率が悪いと感じました。臨床での経験も、背景となる基礎知識もない状態で、無計画に論文を読んでも、その知識を実践で使う機会はありませんでした。

先生方は大学という環境で、基本的にはEvidenceに基づいた医学知識を学んできたと思いますし、試験もEvidenceに基づいて作られます。しかし、現場では業務慣習があふれ、収益性や上司の意向が重視されることがほとんどです。診療の変更は看護師に定着した知識も変える必要があり、相当エネルギーを使いますから簡単なことではないのです。

また、EBMが輝いて治療を改善しまくった時代は終わり、統計で語れる範囲のEvidenceは出そろって定着しています。新しい論文から得られる情報は正直限られています。

論文を読むトレーニングという面では、英語論文は特殊な英語であり、読むことで英語力が向上するわけではありません。また、現代では、各種AIサービスによる自動翻訳も利用できます。

したがって、現代の研修医が論文に時間を費やす理由はほとんどなく、必要に応じて専門家になってから読めば良いと思います。

お客様にならないよう心がけるべし!

臨床で得る体験の量は絶対正義です。百聞は一見に如かずで、たとえルート確保や点滴オーダーのような雑用でも、手を動かすと発見や患者からのリターンがあります。同じ作業も複数回こなせば最適化が進み、重要なポイントや、少ない作業時間で多くの業務をこなす術が身についていきます。

ただ、時代的に研修医に任せられることは減っています。働き方改革とか、ハラスメントへの警戒とかがその背景です。自ら積極性を見せないでいると、自動的にお客様扱いとなっていきます。学生と大して変わらない二年間になるため勿体ないです。体験の数が減ると教科書の読む量も絶対に減ります。

黙っているとお客様になるので、自ら積極性を見せましょう。ポイントは指導者の教えたい気持ちを刺激することです。教科書を読んで、患者カルテをたくさん見て質問をしたり、点滴・指示受け・病棟発熱患者の対応、のような雑用を積極的にしましょう。あとは、救急・当直回数を多くすること。施設によって救急はピンキリとはいえど、救急で学ぶことが研修医期間で最重要です。自然に体験する機会が得られるし、検査の機会も多い。全科から指導が入るし、いろんな先生と話す機会が得られます。救急がイヤな人も多いですが、学ぶことがあんまりなくなったな、と思えるまではやりましょう。

抹消ルート確保を看護師がやる施設もありますが、これも自分でやらないと後々困ると思っています。私が麻酔科だからかもしれませんが、ルート確保を研修医がやらない施設はすぐわかります。圧倒的に医者(3年目以降も)のルート確保が下手です。

筆者(KCP)
筆者(KCP)
コンサルトや相談のときは、電話で聞くより直接会いに行って聞きましょう。電話で善意の耳学問はあまり発生しません。

診療科選択は早い方が良い。是非1年間で決めよう

多くの研修医の先生を見ていると、志望科を決めず迷っている人は伸び悩む傾向が見られます。志望が決まっていれば「自分は○○科に行くからこの知識が必要」と主体的に学びにいくし、教える方もどういうことを教えたらいいかがわかりやすいです。志望がないと教わる方も教える方も困ってしまうのです。1年目が終わるまでに決めることができればよいと思います。

看護師さんと雑談をすべし!

看護師さんとは積極的に雑談しましょう。看護師さんは何でも知っています。なんせ激務ですから、絶対的な経験数を持っています。病気のことも当然知っているし、教科書に書いてない経験則も持っています。どの先生が頼りになってどの先生が怖いのかも教えてくれます。看護師さんに聞くといろんなことを学べます。
看護師さんに色々助けられた経験があれば、その後看護師さんに強くあたったりはしないでしょう。将来看護師さんを下にみて、怒鳴ったりハラスメントをするような医師になることも防げます。

筆者KCP
筆者KCP
本当に迷惑なんですハラスメント医師って。孤立無援になってしまって診療水準は下がるし、職場の雰囲気悪くなって人材は流出するしで、大損害なんです...

メモアプリを使うべし!

普段からメモをとる習慣をつけましょう。これの有り無しで2年後の仕上がりが全然違います。現場では山のように知識が降ってくるので口頭で言われたことを覚えていられるわけはありませんし、同じことを二度教えてもらうことはありません。今まで一般バイトしたことがある人ならわかりますよね。

まずメモを作って、メモを見ながら診療ができるようになること。そしたら診療の歯車として稼働できるわけです。

また、3年目以降、自分の科以外の知識のUpdateをする機会はほとんどありませんが、たまに研修医時代の知識が必要になることがあります。そのときメモが残っているとメモを見ながら乗り切ることができます。なので、現代はメモアプリを使って自分用のデータベースを作っておくのをおすすめします。

研修医時代の経験は生涯の医師人生について回る

研修医時代の経験は、生涯の医師人生について回るものです。人生で唯一無二の期間です。仕事上も人生上も失敗したりもするでしょうが、色々経験し是非楽しい時間にしましょう。

KCP ニッチな麻酔科ライター

この記事のライター

KCP ニッチな麻酔科ライター

KCPはフリーのライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。感想、こんな記事書いてほしい、麻酔科の専門的なご質問、iCoi以外での仕事依頼などはTwitterのDMから。https://twitter.com/KCP58227768

この記事へコメントしてみる

※コメントは承認後に公開されます
コメント投稿ありがとうございます。
コメントは運営が確認後、承認されると掲載されます。

関連記事

医師と出会いたい方に知ってほしい!若手医師キャリアの概要とは?

麻酔科フリーターの正直トーク

医師と出会いたい方に知ってほしい!若手医師キャリアの概要とは?

医師と出会いたい医療職以外の方に向けて、医師業にまつわることを紹介していきます。特に今回は、医師や医学生の義務や制度について解説します。医師や医学生は、プロフェッショナルになるために20代の時間を縛られながらも、素敵な出会いや恋愛に挑戦したいと思っています。

マネーリテラシーが育たない!?男性医師にとって、お小遣い制は不評です!

麻酔科フリーターの正直トーク

マネーリテラシーが育たない!?男性医師にとって、お小遣い制は不評です!

先日、筆者の後輩である男性研修医の先生が、「お小遣い制なら女医さんと結婚する意味ってあります?」と言っていました。やはり、お小遣い制は男性医師的には不評なことが多いようです。今回は、男性医師がお小遣い制をどう感じているのかを深掘りしたいと思います!

【医師必見!】給与の税金が家計に及ぼす影響と賢い節税戦略

麻酔科フリーターの正直トーク

【医師必見!】給与の税金が家計に及ぼす影響と賢い節税戦略

国民にとって常に関心の的である税金。特に所得税は、所得が増えるほど高くなる進行性のため、高収入の医師などにとっては大きな負担です。では、税金は具体的にどの程度の影響を与えるのでしょうか?また、所得が増えると実際に「損」になるポイントは存在するのでしょうか?

【開業が分岐点!?】医師のお金の使い方もいろいろ!年代別の家計は?

麻酔科フリーターの正直トーク

【開業が分岐点!?】医師のお金の使い方もいろいろ!年代別の家計は?

今回は、医師人生でのお金の使い方や家計感のお話をしてみたいと思います。一口に医師といってもお金の感覚は千差万別で、私立・国公立卒によっても大きく分かれますし、職場の性質によっても違いますが、できるだけ偏りがないようにお伝えします。

【2024年10月から!】児童手当の撤廃は医師家庭の生活にどう影響する?

麻酔科フリーターの正直トーク

【2024年10月から!】児童手当の撤廃は医師家庭の生活にどう影響する?

児童手当は、児童を養育する方に支給される手当です。現行の児童手当には所得制限があり、年収960万などの基準で受取額が減ります。政府はこの所得制限を撤廃する方向で調整しています。撤廃されたとして、医師家庭にどのくらい影響があるのでしょうか。

【夫婦の財布の中身】医師同士結婚のお小遣い制度を考える!

麻酔科フリーターの正直トーク

【夫婦の財布の中身】医師同士結婚のお小遣い制度を考える!

結婚後、お小遣い制を敷こうと思っている女性医師のみなさん、要注意です!お小遣い制は、男性医師にとても不評なのです。今回は、お小遣い制が有益であるのかはもちろん、男女の医師としてのキャリアとお金の考え方の違いについて触れてみます。

【医師のための投資講座】社会に出たら投資を始めてみよう!

麻酔科フリーターの正直トーク

【医師のための投資講座】社会に出たら投資を始めてみよう!

社会人になると、投資に興味を持つ方が多いと思います。しかし、具体的な方法が分からず、はじめの一歩を踏み出せないという方も多いでしょう。この記事では投資のはじめの一歩のお手伝いをするとともに、医師として生きる上での投資の意味についても考えたいと思います。

【どんな働き方を選ぶ?】トレーニングは集中的かつ短期間で!

麻酔科フリーターの正直トーク

【どんな働き方を選ぶ?】トレーニングは集中的かつ短期間で!

医師は医局や資格に紐づいたシステムに乗って修練することが多いですが、政治的な意図が入ったり制度設計が悪かったりして理想的とは言えない面もあります。筆者は比較的自由に修練や進路を選んできたので、その経験から、トレーニングはどのように行うのが良いのか考えます。

【廃業も多数!?】フリーランス医師の辛さ事情

麻酔科フリーターの正直トーク

【廃業も多数!?】フリーランス医師の辛さ事情

バイトで生計を立てる、いわゆる「フリーランス医師」。フリーランスが多いとされる麻酔科でも、バイト専業は少なく、常勤先を持ちながらバイトをする人が大半です。この記事では、私自身の経験に基づいて、フリーランス医師として働くことの辛さについてお伝えしようと思います。

「もっといい人がいるかも…?」マッチングアプリでは青い鳥症候群に要注意!

麻酔科フリーターの正直トーク

「もっといい人がいるかも…?」マッチングアプリでは青い鳥症候群に要注意!

理想を求めて次々と交際相手を変えたり、転職したりする。そんな高望みの心理を「青い鳥症候群」というそうです。マッチングアプリは、「もっといい人がいるかも?」という思いから、青い鳥症候群を起こしやすいです。今回は、青い鳥症候群の特徴とその対策法をご紹介します!

麻酔科フリーターの正直トークの人気記事

人気ランキング

話題のキーワード