研修医から始めるマネーリテラシー(1) インフレについて解説します!
医師の30代以降はしんどい。やりがいを追求して低収入。 家庭との両立が大変。仕事に飽きた。でもお金がそれらの問題を解消してくれます。お金の知識大事!シリーズ化予定のマネーリテラシーのお話。今回は、インフレについてです。
目次
金本位制終了後の資本主義はインフレが前提。現金は価値を失っていく!
かつて貨幣は金本位制に基づき、通貨と金(ゴールド)の交換を国が保証していました。ゴールドの量には限りがあるため、貨幣供給量も制約され、経済成長が抑制されることでデフレ気味になる副作用が生じていました。世界大戦の影響などがあって、1930年代、及び1970年代に金本位制が見直され、主要国は金本位制から離脱しました。
以後の世界経済は、経済成長に合わせてそれに見合うだけの貨幣を供給して、インフレを前提とした経済にすればよい、という考え方になりました。この仕組みでは、貨幣供給量が経済成長を制限せず、さらに中央政府は貨幣を希釈することで債務を相対的に削減でき、最終的に国民から富を巻き上げることが可能になります。こうして、インフレを前提とした経済が定着し、貨幣の価値は年々低下していきました。
貨幣価値の希釈をグラフでみる
上図は、1900年に1の価値があった各資産が、2000年でどれくらいの価値になるか、表したものです。※説明のための簡易的な図で、厳密ではありません。
『Stocks for the long run(株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド)』より改変。ぜひ原著を読んでみてください!
1930年代以降、貨幣は希釈され、1970年代以降は加速度的にその価値が下がり、1ドルの価値は100年で約1/20まで低下しました。このようにインフレが進行する中、現金をそのまま貯金しておくと、その価値はどんどん目減りしていきます。
コロナ経済とインフレ、円安
このインフレの基本構造に加えて、2020年のコロナウイルス流行が起点となり、経済サイクルに激しいインフレが発生しました。経済的な混乱を救うため、各国は金利を引き下げ(金利を下げることで貨幣供給が増える)、給付金を乱発しました。市場には異次元のマネーが供給され、貨幣供給過多がインフレを引き起こしました。コロナ禍でばらまかれたマネーに加えて労働力不足、物流制限などの要因が重なり、物価は上昇しました。
株式や実物資産に投資していれば、インフレとともに資産価値も上昇するので有利ですが、現金で貯金していた人々(主に貧困層やマネーリテラシーが低い人々)は、物価上昇に苦しむことになりました。インフレが進行すると、消費者は物価高騰によって生活が困難になり、各国は金利を引き上げ、流通する資金を減少させてインフレ抑制を試みました。その結果、円安が進行しました。アメリカは金利を大幅に引き上げる一方で、日本は経済状況が悪化しているため金利を上げにくく、日米間の金利差が広がり、円安を招いたのです。
ロックダウン、補助金バラマキ、世界的なインフレ、金利差による円安──これらがこの4年間の経済の大きな流れです。日本の庶民生活は圧倒的に貧しくなりました。
医業はインフレ円安に超弱い!
世界的インフレと円安で医業は大打撃を受けています。医薬品や消耗品の多くは輸入品であり、円安の影響で経費が増加しました。しかし、保険診療の売上は診療報酬に基づいているため、病院の収益は増えません。医業はインフレと円安に非常に脆弱なのです。
こんな状況だというのに、厚生労働省は診療報酬の引き下げを敢行してきました。こうして多くの病院クリニックの経営状態は急激に悪化しました。
医師も投資を生涯収入の核としなければならない時代
日本では約30年もの間、インフレがほとんど発生しませんでした。銀行預金を中心とした文化が根付き、投資経験が少なく、マネーリテラシーを持たない人が増えてしまいました。しかし、インフレ社会において貯金は負けが確定している投資のようなものです。早急に投資を始め、現金100%の状態から脱却し、インフレに備えるべきです。
なにより、今後の医療業界には明るい未来が少ないと思われます。医師の給与が高いという時代は過去のものとなり、グローバル基準では医師といえども薄給・経営難の時代となりました。早く投資を始めて投資利益を収入の両輪、もしくは主体としなければならない時代なのです。
この記事のライター
KCP ニッチな麻酔科ライター
フリー麻酔科医のライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。仕事依頼などはX(Twitter)のDMから。https://twitter.com/KCP58227768
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