仕事と家庭の両立を!麻酔科医のメリット・デメリットを挙げてみた

麻酔科の新規参入者の半分は女性です。麻酔科は比較的女性に人気の科といえるでしょう。家庭育児との両立を図りやすいと思われていることが理由です。本稿では実際働いている筆者からみたメリット、デメリットを解説します。麻酔科志望の人の夢を壊すかもしれませんごめんなさい。

仕事と家庭の両立を!麻酔科医のメリット・デメリットを挙げてみた

目次

  1. 筆者は何者?
  2. 麻酔科のメリット1:定時帰宅の文化
  3. しかし...今後は特別でなくなる
  4. 麻酔科のメリット2:バイト市場の成熟
  5. 麻酔科のメリット3:似た家庭状況の仲間の存在
  6. 麻酔科のデメリット1:職場の不安定さ
  7. 麻酔科のデメリット2:仕事の難易度選択は不可能
  8. 結局、麻酔が好きかどうか

筆者は何者?

KCP
KCP
東京じゃない街の30代男性麻酔科医。結婚と妊娠を機にフリーター麻酔科医に。現在子供2人育児と麻酔科の兼業。妻は医師以外の専門職。ガチICU管理も経験したけど燃え尽き。麻酔自体は好きだけど、職業としての麻酔科医はそんなに良くないと思っている人。

麻酔科のメリット1:定時帰宅の文化

麻酔科が女性医師に人気な最大の理由は、定時(もしくは契約時刻)で勤務終了とする文化・勤務形態が定着していることだと思います。

麻酔科だからこそ定時帰宅が可能!みたいな合理的な理由はありません。朝は時間にシビアで融通が利かないです。業務自体も定時に終わらない病院が多いです(残業担当が引き継ぐ)。夜も緊急手術があります。

なぜ麻酔科(だけ)が昔から堂々と定時で帰るワークスタイルになったのか説明はしません。理由はともかく文化として定着したので、今もそうなっているのです。他科でも同じことが絶対できるはずです。やっていないだけでしょう。

しかし...今後は特別でなくなる

最近は女性医師の比率が増えましたし、男性育児も当然になってきました。2024年の医師働き方改革も控えています。そして家庭をないがしろにして働く文化はもはや過去のものでしょう。 今後はどの科も、定時帰宅、時間ごとの分業が進んでいくものと思われます。

いつ全体がそうなるのか?と言われるとわかりません。医師業界は保守的で改革が遅いので何十年もかかるかもしれませんし、すぐかもしれません。診療科にもよるでしょう。しかしこうしないと組織は崩壊すると思います。

麻酔科の定時帰宅の文化は結婚育児のメリットであることに変わりはありませんが、今後は麻酔科の特別感はなくなっていきます。たぶん。

KCP
KCP
業界全体の働き方が変わるのには時間がかかりますが、自分の所属先だけならトップの思想ですぐ変わります。是非トップを見極めましょう。科の選択と同じくらい、自分の所属先や師匠を選ぶのも大事なことです。

麻酔科のメリット2:バイト市場の成熟

麻酔科はバイト市場の流動性が比較的高い科の一つです。○曜日だけの定期勤務、みたいな募集もあります。勤務日数を減らして最低限の技術維持をしながら育児中心の生活をする、みたいなことがしやすいです。

ただしデメリットもあります。まずは通勤距離が長くなりやすいこと。バイト募集は基本的に郊外・地方の募集が多いので遠方に出向くケースが多くなります。あとは麻酔科学会の政策のせいでバイト市場は縮小傾向にあります。

なお事実として、バイトで見かける人は圧倒的に男性比率が高いです。女性に向かない何かがあるのでしょうね。

KCP
KCP
最近、麻酔科の専門医は、ひとつの病院の常勤医として週3日働かないと維持できなくなりました。麻酔科学会のバイト潰し政策です。学会はフリーター潰しを公言しています。

麻酔科のメリット3:似た家庭状況の仲間の存在

育児・教育を重視する家庭の多くは都市部の特定の地域に住居を構えます。幼稚園、学校、学習塾の所在地ということです。すると、そこから通いやすい大病院に子育て世代の麻酔科医が集まることになります。そういう病院に就職できれば、同じような家庭状況の仲間ができることになり、仲良く働けるでしょうし家庭の相談もしやすいでしょう。

ただし、それは違う見方をすれば偏在です。同じような生活を考えている人が同じ病院に集中するわけですから、就職口はすぐ埋まってしまいます。

ガツガツ働きたくない、都市部にいたい、子供に合わせて自由に働き定時で帰りたい、症例選り好みしたい、みたいな人は多数余っています。しかしパイは一定です。しかも麻酔科業務は他科に比べれば(経営上の観点では)専門性が低く、麻酔科医はコモディティ(商品として価格評価されること)化しやすい労働商品です。余っているところでは賃金が下がります。 

麻酔科のデメリット1:職場の不安定さ

麻酔科は組織・職場が崩壊しやすいという特性があります。麻酔科の内部事情で崩壊する場合もあれば、外部・他科との関係で崩壊する場合もあります。バイト・転職市場の影響もあるし、麻酔科業務が基本的に一人で成立する、という事情が崩壊しやすい(というか粘りが効かない)理由だと思います。

崩壊しても職を失うことは普通ありませんが、多少なりとも生活を変えなきゃいけませんし、手続きにも手間がかかります。家族にも影響が及ぶことだってあるかもしれません。

麻酔科のデメリット2:仕事の難易度選択は不可能

麻酔科は合併症を選べません。小規模病院だろうが小手術だろうが容赦なく急変イベントは襲ってきます。様々な「他人の尻拭い」にも遭遇します。あんまり結婚育児と直接関係しないので割愛しますが、筆者的にはこれが一番メンタルを削ってくる要素です。

結局、麻酔が好きかどうか

私なりに頑張ってメリットを挙げたつもりですが、結構無理があります(笑)。ワークライフバランスのシステムは事実時代を先取りして整備されたといえますが、そのうち時代が追いつけば、それが診療科特異的なメリットになることはないでしょう。個人でどうにでもなるポイントでもあります。

偏在、人余り、学会の運営、麻酔看護師の普及などを見ていると、無責任に麻酔科を勧めることはできません。皆さんの生活がありますし、家族を抱えるつもりでしょうから、責任は持てない、というのが正直なところです。

唯一言える絶対的なメリットがあるとすれば、麻酔が好きな人が麻酔をして生活できることです。

そもそも仕事というのは人生の楽しみのうちの一つです。興味・メンタル無視で条件で進路を決めると、条件が変わったら詰んでしまいます。職場特性や需給は時代・地域ごとに歪みがあり、変動するのですから。

それだったら、興味があることを大切にして、多少不利な状況でも楽しく働けるからOK、と納得できるような決め方をした方がいいです。そのほうが長期で働けます。

ワークライフバランスも大切ですが、あくまでサブ要素にとどめ、まずは自分の興味を優先してはいかがですか。ワークライフバランスについては、たぶんこの先の時代はどうにでもなる気がします。というより、読者のみなさんがそういう時代を作っていくんです。

KCP ニッチな麻酔科ライター

この記事のライター

KCP ニッチな麻酔科ライター

KCPはフリーのライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。感想、こんな記事書いてほしい、麻酔科の専門的なご質問、iCoi以外での仕事依頼などはTwitterのDMから。https://twitter.com/KCP58227768

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