4月から初期研修医になるあなたへ!成功するための現実的なポイントとは?
4月から研修医になる先生方の大半は、初めての社会人生活を始めることになります。期待や不安も大きいことでしょう。そこで、私が失敗から学んだことや後輩を見てきた傾向から、効率的に研修医時代を過ごすための現実的なアドバイスをいくつかお伝えできればと思います。
目次
筆者は何者?
はじめはメンタルを死守すべし!
誰でも最初は慣れない環境で働くことに疲れを感じます。自分自身に精神的な不調の要因がないと思っていても、メンタル面での不調をきたしてしまう方が一定数いることも事実です。
一度、メンタル面の問題を抱えたと判断されてしまうと、その後の研修医生活が変わってしまうかもしれません。病院にとっては、メンタル面で退職する人が出るという実績は望ましくないため、早く家に帰ってもいいし、つらければ仕事をやらなくてもいいし、興味があれば教えるよ(黙っていたらこっちからは教えないよ)、というように扱われることもあるかもしれません。これは非常に勿体ないことです。
職場に慣れるまでの期間は、計画的に休むことが重要です。疲れていると、自分が疲れていることに気がつきにくくなります。職場を休むことより調子を崩してしまうほうが影響が大きいため、心配することなく休むことが大切です。
日本語の教科書を早く読み、とにかく体験の場に立つべし!
研修医時代の教科書は、まずは、 日本語で書かれた、研修医向けの、現場で使える系の本を、早く大量に読みましょう。量こそ正義です。全部覚えなくてもいいので、どこに何が書いてあるかを知りましょう。
そして最低限の知識をもって、とりあえず診療に参加して実作業に参加することが大切です。難しい教科書は何が重要であるかを理解してから熟読すればよいのです。体験に基づいて、勉強したいという気持ちで読んだ知識はどんどん身につきます。
医学書購入は計画的にすべし!
研修医の先生の一部は、焦って医学書を買おうとします。
基本的な本を読んでいるかどうかは指導医からすると案外バレバレなのですが、たくさん買ったらからといって優秀になるわけではありません。特に専門家向けの本は買っても無駄になることも多いと思っています。
まずは一歩踏みとどまって、お金を掛けずに読める範囲のものを制覇しましょう。まずローテート中に読むべきは、診療科ごとのガイドラインです。各科診療の大部分はガイドラインが整備されており、かつほとんど無料で読めるはずです。
あとは研修医の部屋に転がってる本、前のローテーターが買った本あたりで十分時間は足りなくなります。それでも足りないと思ったら自分で本を買えばよいと思います。
余談:論文や英語本は効率が悪い
私は、研修医の時代にEvidence Based Medicine (EBM)が大事だと思い、英語論文に時間を費やしたり、英語の教材を読んだりしました。が、非常に効率が悪いと感じました。臨床での経験も、背景となる基礎知識もない状態で、無計画に論文を読んでも、その知識を実践で使う機会はありませんでした。
先生方は大学という環境で、基本的にはEvidenceに基づいた医学知識を学んできたと思いますし、試験もEvidenceに基づいて作られます。しかし、現場では業務慣習があふれ、収益性や上司の意向が重視されることがほとんどです。診療の変更は看護師に定着した知識も変える必要があり、相当エネルギーを使いますから簡単なことではないのです。
また、EBMが輝いて治療を改善しまくった時代は終わり、統計で語れる範囲のEvidenceは出そろって定着しています。新しい論文から得られる情報は正直限られています。
論文を読むトレーニングという面では、英語論文は特殊な英語であり、読むことで英語力が向上するわけではありません。また、現代では、各種AIサービスによる自動翻訳も利用できます。
したがって、現代の研修医が論文に時間を費やす理由はほとんどなく、必要に応じて専門家になってから読めば良いと思います。
お客様にならないよう心がけるべし!
臨床で得る体験の量は絶対正義です。百聞は一見に如かずで、たとえルート確保や点滴オーダーのような雑用でも、手を動かすと発見や患者からのリターンがあります。同じ作業も複数回こなせば最適化が進み、重要なポイントや、少ない作業時間で多くの業務をこなす術が身についていきます。
ただ、時代的に研修医に任せられることは減っています。働き方改革とか、ハラスメントへの警戒とかがその背景です。自ら積極性を見せないでいると、自動的にお客様扱いとなっていきます。学生と大して変わらない二年間になるため勿体ないです。体験の数が減ると教科書の読む量も絶対に減ります。
黙っているとお客様になるので、自ら積極性を見せましょう。ポイントは指導者の教えたい気持ちを刺激することです。教科書を読んで、患者カルテをたくさん見て質問をしたり、点滴・指示受け・病棟発熱患者の対応、のような雑用を積極的にしましょう。あとは、救急・当直回数を多くすること。施設によって救急はピンキリとはいえど、救急で学ぶことが研修医期間で最重要です。自然に体験する機会が得られるし、検査の機会も多い。全科から指導が入るし、いろんな先生と話す機会が得られます。救急がイヤな人も多いですが、学ぶことがあんまりなくなったな、と思えるまではやりましょう。
抹消ルート確保を看護師がやる施設もありますが、これも自分でやらないと後々困ると思っています。私が麻酔科だからかもしれませんが、ルート確保を研修医がやらない施設はすぐわかります。圧倒的に医者(3年目以降も)のルート確保が下手です。
診療科選択は早い方が良い。是非1年間で決めよう
多くの研修医の先生を見ていると、志望科を決めず迷っている人は伸び悩む傾向が見られます。志望が決まっていれば「自分は○○科に行くからこの知識が必要」と主体的に学びにいくし、教える方もどういうことを教えたらいいかがわかりやすいです。志望がないと教わる方も教える方も困ってしまうのです。1年目が終わるまでに決めることができればよいと思います。
看護師さんと雑談をすべし!
看護師さんとは積極的に雑談しましょう。看護師さんは何でも知っています。なんせ激務ですから、絶対的な経験数を持っています。病気のことも当然知っているし、教科書に書いてない経験則も持っています。どの先生が頼りになってどの先生が怖いのかも教えてくれます。看護師さんに聞くといろんなことを学べます。
看護師さんに色々助けられた経験があれば、その後看護師さんに強くあたったりはしないでしょう。将来看護師さんを下にみて、怒鳴ったりハラスメントをするような医師になることも防げます。
メモアプリを使うべし!
普段からメモをとる習慣をつけましょう。これの有り無しで2年後の仕上がりが全然違います。現場では山のように知識が降ってくるので口頭で言われたことを覚えていられるわけはありませんし、同じことを二度教えてもらうことはありません。今まで一般バイトしたことがある人ならわかりますよね。
まずメモを作って、メモを見ながら診療ができるようになること。そしたら診療の歯車として稼働できるわけです。
また、3年目以降、自分の科以外の知識のUpdateをする機会はほとんどありませんが、たまに研修医時代の知識が必要になることがあります。そのときメモが残っているとメモを見ながら乗り切ることができます。なので、現代はメモアプリを使って自分用のデータベースを作っておくのをおすすめします。
研修医時代の経験は生涯の医師人生について回る
研修医時代の経験は、生涯の医師人生について回るものです。人生で唯一無二の期間です。仕事上も人生上も失敗したりもするでしょうが、色々経験し是非楽しい時間にしましょう。
この記事のライター
KCP ニッチな麻酔科ライター
フリー麻酔科医のライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。仕事依頼などはX(Twitter)のDMから。https://twitter.com/KCP58227768
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