【成功の秘訣】キャリアチェンジに成功した医師たちの実例とアドバイス

新米医師は誰でも、最初は一本道の輝かしいキャリアを夢見ることでしょう。しかし、現実には、疲れたり病んだりして、キャリアの途中で方向転換する人が案外多いのです。 意図しないドロップアウトを防ぐには?ドロップアウトはそもそも悪いことなのか?実例から考えてみましょう。

【成功の秘訣】キャリアチェンジに成功した医師たちの実例とアドバイス

目次

  1. 筆者は何者?
  2. 実例1: 専門医取得前に辞めた元整形外科医
  3. 実例2:専門医取得後にきっぱり外科医をやめ、公衆衛生医師に転職した先輩
  4. 実例3:腰椎椎間板ヘルニアで働けなくなった麻酔科医
  5. 上級医の生存者バイアスを考えよう
  6. ハイパー病院で頑張る優秀な人にこそリスクが
  7. ハイパーになりがちな田舎もリスクかも
  8. メンタルも身体も消耗品
  9. 専門家としてドロップアウトしても、金銭的には困らない
  10. 悔いのない人生の選択を

筆者は何者?

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
東京じゃない街の30代男性麻酔科医。激務系の初期研修、専門医取得プログラムで十分に疲れたあと、結婚と妻の妊娠を機にフリーター麻酔科医に。

実例1: 専門医取得前に辞めた元整形外科医

彼は、陽気でコミュ力も高く、男同士なら下ネタでも盛り上がるような「いいヤツ」の整形外科医でした。仕事への情熱も感じられ、いつも忙しくても楽しそうに仕事をこなしているように見えました。

しかし、地方への医局異動があり、その数年後専門医取得の前に整形外科医を辞めることになったという知らせを聞きました。このニュースには、私を含めた彼の知人全員が驚きました。勤務の疲れからくるキャリアの中断だろうと思われます。最近もインスタで幸せそうな投稿を時折お見かけするので、多分幸せなんだと思います。 

実例2:専門医取得後にきっぱり外科医をやめ、公衆衛生医師に転職した先輩

私の外科の先輩も辞めています。臨床能力が高く、現場でのコミュニケーションもよい、頼りになる外科医でした。私のような下の年次の者にも、科の垣根を超えて様々なことを教えてくれ、何度か一緒に飲みにも連れて行ってくれました。 

職場が別になり、きっと医局のエースとして活躍されているものと思っていた矢先、外科医をやめて保健所職員になった、という話を聞きました。保健所転向後にコロナ禍があって死ぬほど忙しかったようです。

実例3:腰椎椎間板ヘルニアで働けなくなった麻酔科医

彼は救急も集中治療もできる、麻酔科医としては重宝されるような人材だったのですが、30代前半で腰椎ヘルニアを患いました。慢性的に腰痛が続いたようで、ずっと痛い痛い言いながら寝そべっているようになりました。手術室にずっといなければいけない麻酔科業務は腰に悪く、結局専門医更新を断念したそうです。今は無理のない範囲で働き、投資と合わせて細々と生活しているそうです。

上級医の生存者バイアスを考えよう

学生や初期研修医の皆様は、大病院の急性期治療の世界のなかにいることが多いですね。そこで働くスタッフがまるで日本の標準的な医師のように思えてしまうかもしれませんが、その認識は危険だと思います。彼らは急性期病院の忙しい生活のなかで生きてこれた、選ばれた人間たちなのです。

彼らは忍耐の世界のなかで生存した成功者であり、彼らのいうキャリア論は生存者バイアスがかかっています。彼らの背後には、想定キャリアを成し遂げられなかった人がたくさんいるのです。決して、彼らのように働くのが普通であり標準、ではありません。

ハイパー病院で頑張る優秀な人にこそリスクが

意図しないドロップアウトの方を見ていると、初期研修のころから人一倍積極的で、たくさんの仕事を抱えていた人が、ある日突然こっきり折れる、という印象をうけます。

勤務医の仕事は、一定の水準まで成長すると成長率が低下し、新鮮味がなくなる一方で、さまざまな不条理や日々の長時間労働がメンタルを削っていきます。 

ハイパーな働き方の人は物理的に疲労も抱えやすい上に、成長が早いので一定の水準を超えたあとの楽しさが損なわれやすく、精神的な消耗が起こりやすいフェーズに入りやすいのでは、と想像しています。

ハイパーになりがちな田舎もリスクかも

また田舎への異動もドロップアウトのトリガーになりやすい気がしています。田舎の娯楽の少なさもあるでしょうし、あとは地方の中小規模病院は医局からの人員配置が手薄になりがちで、上司に恵まれないと仕事が一気に集中しがちなのではと思います。

KCP ニッチな麻酔科医
KCP ニッチな麻酔科医
個人的な感想ですが、遠方の関連病院に配属される部長クラスには曲者が多い気がします。

メンタルも身体も消耗品

疲れて仕事を辞めてしまった人が、再び急性期の最前線に戻ってきたという話はめったに聞きません(私の周囲ではゼロです)。

一度もういいや、と感じてしまうと、休息をとっても同じように頑張れることは多分ないんだと思います。20代は若くて短期的な回復力もあるため、ハイペースで働けはするのですが、その結果、メンタルと体にダメージが蓄積し 、ある日不可逆的に壊れてしまうのだと思います。自分自身を消耗品と認識し、後悔する前に、そのことを意識しておくことが重要だと思います。 

専門家としてドロップアウトしても、金銭的には困らない

専門性やタフネスが求められる現場で働くことは、診療水準の向上に繋がりますが、 「お金を稼ぐ」ということに関しては専門性やタフネスとの相関があまり高くないのが医療という業種です。医局を辞めてバイト医になったら年収があがる、なんてよく聞く話ですし、医師免許さえあればOKみたいな仕事も探せばたくさんあります。バイトをすれば稼げるのに専門性の高い現場にいるということは、専門性の追求にコストを払っている、という言い方もできますね。

もし専門性の追求にそのコストを払うことに納得しているのであれば、それは素晴らしいことです。しかし、自分が納得できない生活を送っているのであれば、無理して続ける必要はないと思います。 

悔いのない人生の選択を

医師は狭い業界ながら、様々な人生の選択肢を取りうる懐の広い業種です。盲目的にハードに働いて疲れてから後悔するよりも、なぜハードに働く必要があるのか、心の整理をして後悔のないように働くほうが合理的です。読者のあなたがどのように労働者生活を終えるかわかりませんが、いずれにせよ辞めたときに後悔のないようにお仕事を選ばれることをお祈りしております。

KCP ニッチな麻酔科ライター

この記事のライター

KCP ニッチな麻酔科ライター

フリー麻酔科医のライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。仕事依頼などはX(Twitter)のDMから。https://twitter.com/KCP58227768

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