男性医師が育児と家事能力を高めるべき理由とは?育休制度が組織の成長を促す
男性育休は制度としては成熟してきましたが、まだ盛り上がっていません。筆者はその原因の一つに、男性の育児参加の意欲と家事能力の問題があると考えています。仕事の問題はその次。育児に手厚い組織には人が集まる傾向となっており、育休をとることはむしろ組織への貢献になります。
筆者は何者?
まずは制度の理解を
読者の方にお聞きします。「育児休業」と「育児休暇」の違いは分かりますか?
育児休業は、法律によって定められている権利制度です。一方、育児休暇は事業所が独自に定めている福利厚生制度で職場によって違います。本記事では前者の育児休業を育休として記載します。
まずお金について。育休を取得しても、事業所(=病院やクリニック)がその分の費用を負担する必要はほとんどありません。事業所が負担する社会保険料はなくなります。一方、育休を取る方の収入は雇用保険から捻出され、普段の1/2ほどが保証されます。
また、育休制度は男女の区別がありません。産休については男女の別がありますが、男性の産休に相当するパパ育休の制度があります。
男女とも育休産休は法定権利で、病院の赤字をもたらさないのですから、遠慮することはありません。悩むとしたら、自分のキャリア、医局や所属先の稼働面だけということになります。
男性医師は家事ができない?
「キャリアのことを悩めばいい」と述べたところで恐縮です。男性については、「キャリアと育児のどっちを取るか?」という考え方をする人は少ないと筆者は思います。
育児は子供だけ見ていれば良い訳ではありません。ママが授乳で動けないときに、有象無象の家事をこなすことも間接的な育児です。家事と育児は一体なのです。ワンオペ育児&家事は、絶えず作業の中断を強いられるため超大変です。
それでは、男性医学生や男性医師の家事能力はどうでしょうか?自炊率は家事能力と相当に相関しますが、私の実感では20代医学生、研修医の自炊率は半数以下です。学生時代ですら自炊をしなかった方が、仕事をして子供を見ながらスピーディーに家事をこなせるでしょうか?
「家事ができないしやりたくない。だから育休取得しない」というのが単純でリアルなところだと思います。育休を取れないといって仕事のせいしてしまうと、ずっと家庭の役割が果たせないままになってしまいます。
育児に手厚い職場に人が集まってきている
さて、男性の能力の問題はさておき、職場の事情も考えてみましょう
育児に対する職場の理解は異なるのが実情です。診療科によって…と言いたいところですが、実際はボスの感覚によるところが大きいと思います。
実際にハードな診療科でも、子育ての体制と人数を用意すると、人は集まっています。とくに女性医師が理解ある職場・医局のハード科を選ぶことが目立ってきたように思います。目立つ、ということはこれまで女性医師は家庭のために我慢をして診療科を選んできたことの査証でもあります。育児に手厚い組織は男女とも人が増え、次に育児をする人が休みやすくなり、人がまた増え、と好循環が生まれています。
男性育休は求人につながり、後輩の道しるべになる
育休を取ると、対外的に育児手厚い組織としてアピールできます。それを見た後輩が入門してくるので、結果として組織に貢献できるのです。現状の男性育休は目立つのでなおさら広告効果が高い。組織のためにも、育休をためらってはいけません。
組織マネジメントの観点では、育児に理解のあるボスと、そういうボスの育成は絶対に必要です。育児のための一時的な稼働損失は、必要経費と認識しなくてはなりません。
しかし、残念ながらそういう意識に至っている職場はまだまだ多くないと思います。そのような組織は、ワークライフバランスに限らずあらゆる面で遅れてしまうリスクがあると感じています。読者の方々はこういった時代感覚にかなり敏感ではないでしょうか。その感覚は正しいと筆者は思います。
子供にはパパが必要
育児や家事は女性だけのものではありません。男性医師側の意識改革がこれからの医療界にとっても非常に大切になってくるはずです。
男性医師が育休を取ることに対し、誰にも止める権利はないし、誰にも迷惑をかけません。
そして何より、子供が育つ時間は待ってくれません。子供にはパパが必要です。子供ができたら、男性も一度は育休の申請を検討してはいかがでしょうか。
この記事のライター
KCP ニッチな麻酔科ライター
フリー麻酔科医のライターです。ニッチな麻酔の記事を書いたりしていますhttp://note.com/kcp。仕事依頼などはX(Twitter)のDMから。https://twitter.com/KCP58227768
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