海外の看護師ってどんな働き方?日本にいた私がイギリスの看護師になるまで

2017年に大学を卒業した私は、2年3ヶ月で日本の病院を退職。英語を学ぶためにオーストラリアへ留学を経て、イギリスへ。2023年イギリスの看護師免許を取得し、長年の夢であった海外に本格移住。イギリス看護師を目指したきっかけや異国で働くことのメリットを紹介します。

海外の看護師ってどんな働き方?日本にいた私がイギリスの看護師になるまで

目次

  1. 医療で国際的な貢献をしたいという思いから看護師に
  2. 長期休みの度に医療過疎地域へ出向いた看護学生時代
  3. 自分のしたい看護は日本ではできないと悟った
  4. 思い切ってオーストラリアに英語留学へ
  5. 倍率10倍のイギリスでのワーホリに当選!
  6. 1年の月日を経てイギリスの看護師免許を取得
  7. 領域特化のイギリスでワークライフバランスを楽しむ日々

医療で国際的な貢献をしたいという思いから看護師に

昔から海外で暮らすこと、国際協力などに関わる仕事をすることへの憧れがあった。”世界がもし100人の村だったら”というテレビ番組を見たことがきっかけだ。番組では主に発展途上国で暮らす人々の苦悩が紹介されていた。

例えば、毎日紛争などで日々身の危険を感じ生きている人々、スラム街に暮らし、医療も受けれず亡くなっていく人々、子供ながらに家計を支えるため、一日中灼熱の中ゴミ山で缶やペットボトルを拾ってお金に変える少女。小学生の私が日本で不自由なく過ごす生活とは、かけ離れた世界に衝撃を受けたのを今でも覚えている。

将来はそんな人達のために働きたい!と高校時代の進路相談の時に母親に伝えると「それなら看護師になるのがいいんじゃない?」と。その一言で看護師になることを決意した。

長期休みの度に医療過疎地域へ出向いた看護学生時代

看護学生時代には、夏休みを利用してアメリカのロサンゼルスにある医療視察へ行き、現地の病院やナーシングホーム等を回った。最新医学に触れ、日本では得られない強いインスピレーションを受けた。海外で働くことの憧れが強くなった出来事でもあった。

また、フィリピン、マニラでのボランティアに参加したこともあった。ストリートチルドレンと呼ばれる、路上で生活する子供達。親のいない家庭で育った子供が集まる施設。性被害にあった女性が集まる施設。こうした環境は、日本ではあまり目にしないような、発展途上国ならではの現実であり、海外での労働意欲をより一層強める出来事となった。

フィリピン、マニラでのボランティア

自分のしたい看護は日本ではできないと悟った

卒業して最初に就職したのは、東京都内の病院。ICU看護師として働き始めることになった。国際協力や災害看護で有名な病院であったことから、強い希望を持っての就職であった。

しかし、そこで知らされたのは、国際協力や災害看護に参加できるのはほんの一部の人間であることだった。そして、同じ病院で十何年働いていても、確実にそこまでいける保証がないことであった。

決断するなら早いほうがよい。そう思い、2年数ヶ月で早々と退職。オーストラリアの看護留学に参加することを決意する。

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新卒看護師として配属されたICUでの毎日。大学4年間で学んだ知識、技術と共に実践の世界へ。そこで直面した毎日の苦悩と発見。学生時代に想像していたICU看護師とはかけ離れた世界を感じた私が退職して4年後の今、若手看護師の皆さんに伝えたいこと。

思い切ってオーストラリアに英語留学へ

英語を学びたいこと、そして日本との時差も無く敷居が比較的小さかったことから、オーストラリアへの語学留学をすることに決めた。思い始めたら、勢いで決めてしまうことも大事だと思う。

オーストラリアでは、日中は語学留学の授業をこなし、学校が終わると毎日のように言語交換のイベントへ足を運び、とにかく英語で人と話した。社交的に過ごす努力をしたことで、友達も増え、充実した期間となった。

オーストラリアでの生活は心地よく、その場で看護師を目指すことも考えたが、そんな時に世界中でコロナが流行りだし、日本に一旦戻ることを決意する。

倍率10倍のイギリスでのワーホリに当選!

少しだけコロナへの「慣れ」が進んだ2021年。当時まだ抽選だったイギリスのワーホリに応募。毎年倍率10倍と言われていたが、なんと1回目の応募で当選。

そして2021年夏に渡英した。最初は現地のナーシングホームなどで働き、3回目の就活でNHS(イギリスの国営病院)からジョブオファーをもらい、ナーシングアシスタントとして働くことになった。

ナーシングアシスタントは、その名の通り看護補助員のような仕事で、イギリスの看護師資格がなくても応募できるものである。医師や看護師、その他の医療者と一緒に働くことができるため、とても良い経験となった。

またイギリスでの生活もとても好きだった。日本とは違う文化が存在し、しがらみもなく、とても生きやすい世界であった。

イギリスでの生活

1年の月日を経てイギリスの看護師免許を取得

一般に、他国の人間が、その場所で医療者として働くことはとても難しいことだと思う。さまざまな社会背景のある方を、文化的なバックグラウンドに応じてサポートすることは同じ国の人でも難しいというのに、ましてや日本人の私がイギリスで看護師として働くことなんて、当初は夢のまた夢でしかなった。

しかし、一緒に働く看護師の同僚たちの熱心な姿を見て、私もこの国で看護師になることを決意した。日本人看護師がイギリス看護師免許を取得するためには3つの試験に合格する必要がある。(簡単な情報を私のブログで紹介しているので興味のある方はぜひこちらを参照ください。https://note.com/haluuuuu64/n/n5fcc0385e208)私は猛勉強を重ね、約1年の月日を経て、すべての試験に合格し、イギリスの看護師免許を取得した。

領域特化のイギリスでワークライフバランスを楽しむ日々

現在は、ロンドンにあるNHSの病院で看護師として勤務している。私の病院は、国内でも有名な心臓、肺の手術に特化した病院となっており、そこで胸部外科の病棟で働いている。

この国で働くことのメリットの一つとして休みの多さがある。1日の勤務時間は約12時間と長いが、私はフルタイムで週37.5時間の契約となっているため、週3日の勤務のため、なんと週4日休みになる。あとはホリデーのための年に30日前後の有給も与えられる。日本では年に一度1週間程度の長期休暇があった気がするが、こっちでは3週間〜1ヶ月のホリデーを取る人もいる。私もこの有給や普段の休みを使い、2022年は一年のうち18カ国(主にヨーロッパ)を回った。そのくらいワークライフバランスはしっかりしており、そこがヨーロッパならではの素晴らしい文化であると思う。

日本での看護師生活で悩んでおり、現状を変えたい方。また、海外看護師として働くことに興味がある方。決して簡単な道ではないけれど、イギリスで看護師として働くという選択肢も考えてみてはいかが?

Haru

この記事のライター

Haru

東京で生まれ育ち、大学卒業後、都内病院でICU看護師として働く。3年目で退職し、オーストラリア、シドニーに語学留学へ。その後2021年にイギリスへ渡英し、2023年英国看護師免許を取得。現在ロンドン国営病院の胸部外科病棟に勤務。趣味は、旅行、アウトドア全般、スポーツ観戦、映画鑑賞、読書。 https://note.com/haluuuuu64/ イギリスの看護師事情についてのブログや英国看護師を目指す方へ相談を中心としたサポートをしています。

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