Dr.大越と学ぶ#2 初期研修中も自分のワークライフバランスを守るために
初期研修時代は自分の裁量が及ばないことが多く、突然呼び出しを受けることもあり、ストレスに感じることも多いと思います。初期研修医がワーク・ライフ・バランスを維持するためには、ちょっとした心がけが必要です。初期研修に全振りしすぎて健康を損なわないようにしましょう。
第117回医師国家試験お疲れ様でした!
第117回医師国家試験を受験された皆様、お疲れ様でした!!!
心と体をゆっくり休めて、次の段階に備えてくださいね。研修医生活はどんな感じなのでしょうか。研修をとにかく頑張って早くスキルを身に着けたいと思っている人、厳しい生活を生き延びられるか心配している人、ゆるゆるとした研修先を選択した人、様々でしょうか?
かつての初期研修必須道具「ポケベル」
私は今の臨床研修制度が始まる前の世代なので、直接自分の出身大学の外科に入局し、大学病院で研修を始めました。そこで、「ポケベル」を持つように言われました(「ポケベル」が何かわからない人はググってくださいね。もはや歴史的遺物になりました)。それは病院で支給されるのではなく、自分で用意しなければなりませんでした(ケチ)。
病院からの呼び出しに使われるのに、なぜ自分で使用料を支払ってポケベルを持たなければならないのか?大いに疑問に思ったので、私を呼び出すと発信者側に支払いが発生する設定にしておきました(当然ですよね?)。病院内でも病院外でも容赦なくポケベルで呼び出されたものです。
指導医の先生に連絡したいときは、やはりポケベルで呼び出すことになっていました。深夜、病棟から私のポケベルに呼び出しがある→病棟に電話する→「術後の患者さんの尿量が少ないが、どうすればよいか」と聞かれる→利尿剤を投与すべきか点滴をすべきか悩む→私が指導医のポケベルを鳴らす→指導医が私に電話してくる→「○○という点滴を」という指示をもらう→私が病棟に電話して指示を出す→「流量をどうするか」と聞かれる→わからない→もう一度指導医のポケベルを鳴らす→以下略...
そういう非効率なことをやっていました。
研修医と指導医とのやりとり
私は要領の悪い不出来な研修医で、当時の指導医の先生をしょっちゅう呼び出してはいろいろ聞いていました。今でも、全く頭があがりません。これから研修をする人、研修中の人、指導医や上級医に相談や報告をするときは要領よくするように心がけましょう。ただ、深夜に起こされると、研修医も指導医もとっさには頭が動きません。あらかじめ日中に十分ディスカッションしておく必要があります。
呼び出しによるストレスは想像以上
今はPHSやスマホで呼び出されると思いますが、病院からの呼び出し音を自分の好きな音楽にしない方が良いでしょう。何度も何度も聞くことになるので、イヤになるかもしれません。そのうち、シャワーを浴びているときに呼び出し音の幻聴が聞こえました。頭を洗っているときに呼び出し音が聞こえたような気がして、何度シャワーを止めたことでしょう。今はそういうことはほとんどなくなりました。
帰宅後に病院からの呼び出しがあるのかどうかは、医師のライフスタイルに大きな影響を及ぼします。現在の初期研修医は私の頃ほど呼び出しはないと思いますが、全くないということはないでしょう。自分のペースで仕事をしたり生活をしたりということが出来ないこともあるかもしれません。私自身はいつ病院から呼び出されるかわからないと強迫観念にかられ、病院と家以外の場所にいるのはストレスでした。
自分のワーク・ライフ・バランスを守るために
私が心がけていたことがあります。なるべく規則正しい時間に食事をとること、夜はなるべく家に帰って寝ることです。仕事が終わらなくてもいったん中断して食事をとるようにしていました。もちろん手術やカンファレンスなど自分の裁量が及ばない業務の場合は仕方がないのですが、カルテ記載や様々なオーダー、指示出しなど、ひとりでできる仕事はある程度自分の裁量でできます。
夜はなるべく家に帰って寝るようにすると、精神的に一旦仕事から切り離された感じがしました。料理や洗濯といった家事のルーチンもなるべく守るようにしていました。私の場合は帰宅後も容赦なく呼び出しがあったわけですが、ずっと病院に住んでいるような状況よりは、家でお風呂に入って家の布団で寝ることで、心身を休められたと思います。
特に初期研修の間は仕事において自分の裁量が及ばないことが多いので、ストレスが多いかもしれません。ワーク・ライフ・バランスの「ライフ」の部分を自分で意識的に守らなければ、いくらでもワークに全振りしがちです。私も意識して食事をとるようにしていたはずですが、研修期間にかなり体重が減っていました。研修も、心身の健康があってこそですので、「ライフ」を守る努力が必要かな、と思います。 どんなことでもいいので、自分の気持ちを切り替えるルーチンを持っておくことをお勧めします。自分で自分のワーク・ライフ・バランスを守りましょう。
この記事のライター
大越香江
日本消化器外科学会指導医・専門医。日本外科学会専門医・指導医。 日本消化器外科学会男女共同参画委員。日本臨床外科学会評議員。日本内視鏡外科学会評議員。 消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)副会長。 大腸癌の手術をメインに腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下鼠経ヘルニア修復術などの低侵襲手術を執刀する消化器外科医。1999年京都大学卒業。 消化器外科関連のみならず、男女共同参画、医師の労働環境などに関する論文多数あり。
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