【内閣府女性のチャレンジ支援賞受賞】女性はチャレンジし続けなければならないのか

こんにちは、消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)の副会長を務めている大越香江です。これまで、消化器外科医として勤務する傍ら、女性外科医の活発化のために活動をしてきました。この度、AGEIS-Womanは令和6年度の内閣府女性のチャレンジ支援賞を受賞しましたので、報告させていただきます。

【内閣府女性のチャレンジ支援賞受賞】女性はチャレンジし続けなければならないのか

目次

  1. 消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)とは
  2. 内閣府女性チャレンジ支援賞を受賞しました
  3. さまざまな業界で活躍する女性とお会いして
  4. 「女性だから〜」というのは時代後れ

消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)とは

私は、消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)の設立時からの運営委員であり、現在は副会長を務めております。

この会は、もともと女性が少ない日本消化器外科学会において(女性会員は2014年時点で6%)、学会会場でも女性同士が出会うことが少なく寂しい思いをしていたところに、女性消化器外科医の集う場が欲しいと思って設立されたものです。ただ集まっておしゃべりをしているというわけではなく、セミナーをしたり、学会に働きかけて男女共同参画系のセッションを提案したりしています。

実を言えば会の運営もそれなりに大変で、若手育成をして歳月とともに代替わりしていかなければなりません。設立当初にかかわった人だけでは会は老朽化してしまいます。ただ、私はどうも人を育成するというのが苦手なので(自分の子どもたちも含めて・笑)、本当に困っています。年齢を重ねるとともに私のこうした弱点が露呈してきました。

大越香江
大越香江
会長(河野恵美子先生:大阪医科薬科大学)の強いリーダーシップがあってこそであり、私はサポートしきれているかたいへん心もとないのですが、さまざまな活動を通じて貢献させていただいております。

内閣府女性チャレンジ支援賞を受賞しました

さて、この度私たちのAEGIS-Womenが「令和6年度内閣府女性のチャレンジ賞」を受賞しましたので、ご報告いたします。この賞は、起業やNPO法人の活動、地域活動にチャレンジしている女性個人や団体グループ、またそれらを支援している団体・グループを顕彰するものです。男女共同参画の機運を高めるきっかけにするために、平成16年度から実施されています。賞には、女性チャレンジ賞、女性チャレンジ支援賞、女性チャレンジ支援賞特別部門賞があり、我々はその名前の通り、「女性チャレンジ支援賞」をいただくことになりました。  

授賞式は2024年6月26日に「令和6年度 男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」のプログラムの一部として東京国際フォーラムで執り行われ、河野恵美子会長、野村幸世前会長、副会長の私の3名で出席してきました。河野会長が壇上で加藤鮎子男女共同参画担当大臣より表彰状を、岡田恵子男女共同参画局長よりトロフィーを授与されました。

大越香江
大越香江
正直なところ表彰は会長がいれば十分なのですが、思いがけずお誘いいただいたのでせっかくの機会と思い、東京まで出向いてまいりました。

さまざまな業界で活躍する女性とお会いして

この授賞式では、 東京大学医科学研究所附属病院泌尿器の准教授である髙橋さゆり先生のほか、化粧品材料に関する企業をされている三田かおりさんなど、さまざまな領域でご活躍されている女性がいらっしゃいました。ほかの受賞者の人たちの活動内容や報告を聞くのも勉強になりますね。

そのなかでも、女性のサッカー振興に携わっておられる方(小林美幸さん)のお話が印象的でした。小林さんは主婦のサッカーチームを作って指導しておられるのですが、ある時試合に負けて悔し泣きをする人たちを見たそうです。ある人が、自分のことで(試合に負けて)悔しい気持ちになるというのがとても久しぶりであったと言っていたそうです。また、サッカーをするときに下の名前で呼びあうことも新鮮な体験なのだそうです。

確かに女性は結婚して新しい家族を持つと、○○さんの奥さんとか××ちゃんのママなどと呼ばれることが多くなります。女性は自分固有の名前で呼ばれることが少なくなるかもしれませんね

大越香江
大越香江
結婚後に改姓するのは圧倒的に(96%)女性ですよね。

「女性だから〜」というのは時代後れ

小林さんのお話は、「女性が個人として自分のための活動をすることができる場を作ることと、その場へのアクセスを確保することが重要」というまとめでした。なるほど、それって、どの分野にも当てはまりそうですね。女性もサッカーをやりたければやればいいし、消化器外科医になりたければなればいいのです。今は、「女は外科にいらない」と言われていた時代よりははるかにましになりましたが(少なくとも今「女は外科にいらない」などと言えば一発退場のセクハラになります)、まだまだ外科は男性優位の場です。外科は女性にとって居心地のいい職場環境ではなく、女性が外科医にとして修練を積む道のりも決して容易とは言えません。

女性は常に男性社会に参画するためのチャレンジを強いられるのでしょうか?もっとふんわりのんびりやっていけないものでしょうかね?そんなことを言っているとゆるふわと言われそうですが、もう十分茨の道だったように思うのです。男性の作った土俵に上がり、男性の作った評価軸で評価されなければならないのだろうか?というようなことを考えるようになりました。

とは言え、この度の受賞は我々のAEGIS-Womenの活動が社会的に評価されたと言ってよいでしょう。まだまだ道は長いのですが、消化器外科領域をもっと働きやすく魅力的な場にすること、女性が消化器外科医を目指しやすくするためにこれからも活動していきたいと思います。

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大越香江

この記事のライター

大越香江

日本消化器外科学会指導医・専門医。日本外科学会専門医・指導医。 日本消化器外科学会男女共同参画委員。日本臨床外科学会評議員。日本内視鏡外科学会評議員。 消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)副会長。 大腸癌の手術をメインに腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下鼠経ヘルニア修復術などの低侵襲手術を執刀する消化器外科医。1999年京都大学卒業。 消化器外科関連のみならず、男女共同参画、医師の労働環境などに関する論文多数あり。

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