投資?それとも投機?日経の製薬企業の恐ろしい暴落事例5選!

人生100年時代。医師の皆さんの中でも、NISAを初め、株式投資をやっていらっしゃる方は多いかと思います。しかし、一歩間違えて欲が出てしまうと「投機(ギャンブル)」になってしまうことも事実です。今回は、現役医師の私が、製薬企業への投資の恐ろしい事例を5つご紹介します。

投資?それとも投機?日経の製薬企業の恐ろしい暴落事例5選!

目次

  1. 儚く脆い、製薬企業投資への夢
  2. 事例1:アキュセラ・インク(4589)
  3. 事例2:サンバイオ(4592)
  4. 事例3:リボミック(4591)
  5. 事例4:アンジェス(4563)
  6. 事例5:テラ(2191)
  7. 一攫千金には常に転落のリスクあり!

儚く脆い、製薬企業投資への夢

みなさん、投資はされていますか?もっというと、個別株投資をされていますか?僕は、数年前まで個別株投資やっていました。そして、とある一件で大打撃を受けて撤退し、今ではおとなしく投資信託に任せています。

というのも、数年前、僕は一攫千金を夢見てバイオベンチャーに個別株投資をし、一ヶ月で200万円の大金を得て、たった2日でその全てを失う経験をしたからです。あれは悪夢でした。しばらく引きずりました。そして、現在の堅実的な投資スタイルに移行しました。

今回は、一攫千金を夢見て資金が集まるも、あえなく大暴落をした日本の製薬企業の事例を5つご紹介します。

Dr.パンダ
Dr.パンダ
なお、本記事は特定の銘柄の購入を勧めたり、逆に否定したりする意図はございません。事例として紹介しているまでであることを御理解ください。

事例1:アキュセラ・インク(4589)

窪田製薬ホールディングス(旧アキュセラ・インク)は、2002年にアメリカのシアトルで設立され、2015年に日本法人化した眼科用医薬品の創薬企業です。増殖糖尿病網膜症、スターガルト病、中期加齢黄斑変性の治療薬開発などを手がけています。

2016年上旬、加齢黄斑変性を対象としたフェーズ2b/3およびフェーズ3臨床試験の組入が完了したとの報告を受け、株価は一ヶ月で80%も上昇し、上場来高値の7700円を記録しました。

しかし、同年5月、その試験で主要評価項目を達成できなかったとIRで発表されました。これにより株価は急落し、なんと6営業日連続ストップ安の大暴落。株価は一時1000円を下回るほどの、歴史に残る大暴落となりました。製薬の大暴落と聞いて、まず先にアキュセラインクを挙げる方も少なくない、そんな事例かと思います。

現在、窪田製薬は他の適応症での開発を継続しつつ、ウェアラブル近視デバイス「Kubota Glass」の開発など事業の多角化を図っています。近視のなくなる世界を、窪田製薬には期待したいところです。

事例2:サンバイオ(4592)

2019年1月、再生細胞医薬品開発のバイオベンチャー、サンバイオの株価が劇的な変動を見せ、株式市場に大きな衝撃を与えました。

サンバイオの株価は2019年1月21日に12,730円の高値を記録していました。しかし、わずか2週間後の2月5日には2,440円まで急落し、約80.8%もの下落を記録しました。この急落により、時価総額は推定4,000億円以上も減少したのです。

この暴落の引き金となったのは、1月29日に発表された臨床試験結果でした。サンバイオは主力開発品「SB623」の慢性期脳梗塞を対象としたフェーズ2b臨床試験の結果を公表しました。この試験では、Fugl-Meyer Motor Scale (FMMS) による運動機能評価を主要評価項目としていましたが、投与6カ月後のSB623投与群とコントロール群の間に統計学的有意差が認められませんでした。

この結果の発表直後から、株価は4日連続でストップ安となり、歴史的な大暴落となったのでした。これにより、自己破産に追いやられた投資家は少なくないとか。

しかし、同社は「アクーゴ🄬脳内移植用注」(一般名:バンデフィテムセル)について、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善治療薬として2024年7月31日に条件及び期限付き製造販売承認を取得したと発表しました。サンバイオの挑戦はまだまだ続いています。

事例3:リボミック(4591)

リボミックは、RNA医薬の研究開発を行う日本のバイオベンチャー企業として注目を集めてきました。2006年に設立され、2014年に東証マザーズ(現在のグロース市場)に上場を果たしました。

同社の主力開発品であるRBM-007は、加齢黄斑変性症と軟骨無形成症の治療薬候補として期待されていました。また、その他のアプタマー医薬の開発も進めており、RNA創薬の最前線を走る企業として評価されていました。

しかし、2021年12月27日、リボミックはRBM-007の加齢黄斑変性を対象としたフェーズ2臨床試験の結果が、主要評価項目を達成できなかったと発表しました。

翌12月28日、リボミックの株価は前日比約60%の大暴落を記録しました。株価は前日終値1,199円から483円まで急落し、時価総額も大幅に減少しました。

なお、筆者もこれにやられた1人です。今でもその時の、血の気が引くような感触を覚えています。バイオ株の恐ろしさを身にしみて感じた一件でした。

事例4:アンジェス(4563)

アンジェスといえば、大阪大学免疫学教室に由来するバイオベンチャーですが、投資家の間では、ウイルスパンデミックによる株価乱高下の象徴として有名なのではないでしょうか。

2020年3月、同社が新型コロナウイルスDNAワクチンの開発を発表すると、株価は急騰し、時価総額は一時4,000億円を超えました。大阪府を初めとする公的機関の補助金も投入されていました

しかし、2021年2月8日、臨床試験の中間解析結果が芳しくないことが発表されると、株価は前日比30%以上下落し、時価総額は1,500億円程度まで縮小。その後も下落が続き、2023年9月時点では時価総額が約200億円にまで減少しています。

SARS-Covid-19への不安、そしてそれを日系企業が打ち破るのではないかという幻想から、盲目的な投資をしてしまった投資家も少なくないのではないでしょうか。今後やってくるかもしれない、新たなパンデミックの際には、本件を教訓として覚えておきたいものです。

事例5:テラ(2191)

テラも、東大医科学研究所由来のバイオベンチャーで、かつコロナウイルス関連で大騒動を起こした企業として忘れてはなりません。

2020年9月、テラは新型コロナウイルス感染症治療薬「プロメテウス」のメキシコでの承認を発表し、一時20倍近い価格まで株価が急騰しました。しかし、2021年3月、警視庁と証券取引等監視委員会による強制捜査が行われ、承認に関する一連の発表が虚偽であったことが明らかになりました。この日、テラの株価は前日比50%以上の急落を記録し、時価総額は数十億円規模で減少しました。

その後も、相次いで虚偽の情報開示、インサイダー取引や偽計取引の疑い、そして内部管理体制の不備が次々と明らかになり、企業の信頼性は急速に失墜していきました。2021年10月13日には東京証券取引所が特設注意市場銘柄に指定し、最終的に2022年8月23日には上場廃止となりました。

テラの事例は、バイオベンチャー投資のリスクの高さを如実に示すとともに、新型コロナウイルス関連の開発への過度な期待や不正確な情報開示が引き起こす危険性を浮き彫りにしました。

一攫千金には常に転落のリスクあり!

いかがでしょうか。今回は日系製薬企業の大暴落事例を5つご紹介しました。製薬企業に限らず、株価投資はいつもリスクとの隣り合わせです。

自分の余剰資産で、身の丈に合った投資をすることで、堅実な資産形成をしていきたいところですね。是非、読者のみなさんも、ご自身の投資スタイルをコメント欄で教えてください!お待ちしています!

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Dr.パンダ

この記事のライター

Dr.パンダ

地方出身、中高は公立で東京大学に入学し、医学科に進学して令和X年に卒業しました。現在は、地方の急性期病院にて勤務しています。ひとりの若手医師として心の内をリアルにお届けできればと思います。

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