【前編】不妊治療と医師の仕事は両立できる?内科系医師の選択に迫る!
不妊治療を受ける方は年々増加しており、女性医師に関してもその例外ではありません。今回は、多忙な診療科で勤務されながら婚活をご経験され、現在は不妊治療に奮闘中の「はなねこ先生」にお話を伺いました。婚活と不妊治療を通じて感じたはなねこ先生の苦悩をお聞きします!
命の現場で働きながら、婚活と妊活に励む
さっそくですが、はなねこ先生のこれまでのご経歴を教えてください。
はなねこ先生
地方国立大学を卒業後、地元に近い大学病院に戻って初期研修を行い、そのままその病院の某内科に入局しました。(✳︎先生のご希望により、具体的な診療科は伏せています。)
いくつか県内の派遣病院などで一般診療を学んだ後、専門分野の研修のために海外留学を経験しました。現在は医師14年目で、地方大学病院に勤務しています。
いくつか県内の派遣病院などで一般診療を学んだ後、専門分野の研修のために海外留学を経験しました。現在は医師14年目で、地方大学病院に勤務しています。
先生は内科系を標榜されているとのことですが、どのような経緯でその診療科を選択されましたか。
はなねこ先生
診療科を決めたのは、医学部5年生も終わりの頃でした。当時、ショック状態だった患者さんが数週間後にはすたすた歩いて帰るのを目撃したり、逆にさっきまでお話ししていた受け持ち患者さんが急変して亡くなってしまい、ご家族へのICの場で指導医の後ろで泣きそうなのを堪えたりと、さまざまな経験をしました。こういった命のやり取りの最前線の現場で働きたいという思いから、現在の診療科を志望しました。
実際にその診療科に進まれて、お仕事はいかがですか。
はなねこ先生
女性が少ない診療科で、体力的にもキツいと聞いてはいたので、家族からは心配されたこともありました。それでも「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、入局したての数年間はとにかく無我夢中で楽しかった記憶しかありません。
今の後輩の医局員たちを見ても、同じような印象を受けます。もちろん、辛かったり悔しかったりしてトイレで泣いたことも一度や二度ではありませんが、それはどの診療科を選んでも起こりうることだと思います。
今の後輩の医局員たちを見ても、同じような印象を受けます。もちろん、辛かったり悔しかったりしてトイレで泣いたことも一度や二度ではありませんが、それはどの診療科を選んでも起こりうることだと思います。
多忙な診療科にて勤務される中、プライベートはいかがですか。
はなねこ先生
昔から結婚願望はあったのですが、仕事が多忙でなかなか恋愛が進まず苦労しました。しかし、結婚や子育ての希望はあったので、婚活をすることにしました。紆余曲折あって無事結婚しましたが、現在は不妊治療をしながら妊活を続けています!
結婚は相性に加えて「タイミング」
先生は婚活をご経験されたとのことですが、その際のエピソードを教えてください。
はなねこ先生
忙しい診療科に入っておきながら結婚願望だけは強く、婚活は真剣に取り組んでいました。ただ、とにかく時間がない生活をしていたので、主に利用していた結婚相談所でも辛い思い出が多かったです。
どのようなことがお辛かったのでしょうか?
はなねこ先生
職業は隠すわけにいかないので、内科医であることくらいは話しますが、仲人さんからは「収入や資格はなるべく最初からは言わないように」と言われていて、もやもやとした気持ちがありました。
私自身、本当に仕事人間だったので、自分が一番努力していることについて話せないとなると、話題に困っていました。「私ってなんてつまらないプロフィールなんだろう」と悲しくもなりました。男性はプロフィールに年収や資格をどんどん書いていて、それが売りにもなるのに、女性はそれが足を引っ張るなんて……
私自身、本当に仕事人間だったので、自分が一番努力していることについて話せないとなると、話題に困っていました。「私ってなんてつまらないプロフィールなんだろう」と悲しくもなりました。男性はプロフィールに年収や資格をどんどん書いていて、それが売りにもなるのに、女性はそれが足を引っ張るなんて……
自分の好きなことを話せないのは辛いですね。最終的にはどのような方とご結婚されたのでしょうか。
はなねこ先生
今の夫は、結婚相談所で出会ったわけではなく、友人から紹介された会社員の方です。出会った当時は結婚するとは思っていなかったのですが、私の留学後に久しぶりに再会し、運良くお互いのタイミングが合って結婚に至りました。
婚活の場以外で現在の旦那様と出会われたのですね。
はなねこ先生
見た目も好みの顔というわけでもなく、趣味も全然違います。ただ何でも気軽に話し合うことができて、よく話を聞いてくれる穏やかな人です。スペックばかりが最初にくる婚活市場で出会っていたら、たぶん結婚しなかったかなと思うので、本当に結婚って難しいものです。
スペックでの判断を超えた出会いだったのですね。
はなねこ先生
結婚は自分一人でできるわけではないので、当然「今したい!」と思ってもできるものではありません。私もずーっと結婚したいと思いながら、気付けば40歳間際になっていました。
若い頃に思っていた以上に、結婚は相性に加えて「タイミング」に左右される出来事です。なので、もちろん相手探しは積極的にすべきとは思いますが、仕事よりもとにかく結婚!という考えでなければ「できるときにする、後はなるようになる!」くらいに考えておいたほうが良いかもしれません。
若い頃に思っていた以上に、結婚は相性に加えて「タイミング」に左右される出来事です。なので、もちろん相手探しは積極的にすべきとは思いますが、仕事よりもとにかく結婚!という考えでなければ「できるときにする、後はなるようになる!」くらいに考えておいたほうが良いかもしれません。
不妊治療と医師の仕事の両立に苦悩する日々
ご結婚後は不妊治療をされていますが、お仕事との両立はいかがでしょうか。
はなねこ先生
結論から言うと、全然両立できていません。 現在の勤務先では、看護師さんや薬剤師さんでは、不妊治療中の方には夜勤免除などのある程度の配慮がされるようです。しかし、産業医の先生に相談した際には「医師については前例がなく、医局内で話し合って」と言われました。
前例がないことを始めるのは難しいのですね……
はなねこ先生
私の場合には、不妊治療の初期に大きく体調を崩して傷病休暇を取らざるを得ない状況になってしまったので、今では特別ルールの勤務体制にしてもらっています。
しかし、あくまでこれは医局の「ご厚意」での働き方です。これまで勉強してきた自分の専門分野を活かすこともできませんし、同僚全員から良く思われているわけでもありません。私の診療科の場合、ある程度放射線業務があるので、さらに戦力にならず分が悪いと感じています。
しかし、あくまでこれは医局の「ご厚意」での働き方です。これまで勉強してきた自分の専門分野を活かすこともできませんし、同僚全員から良く思われているわけでもありません。私の診療科の場合、ある程度放射線業務があるので、さらに戦力にならず分が悪いと感じています。
お仕事との両立だけでなく、不妊治療そのものでのご負担も大きいですよね。
はなねこ先生
私も経験するまで知らなかったのですが、不妊治療はなかなか遅々として進まずすごく時間がかかるものです。また、自分の生理周期で急に通院日が決まったり変わったりするので、前もって予定を立てて休みを取るということがとても難しいんです。
そのため、離職したり転職したりしている女性が多いことも雑誌やブログを読んで初めて知りました。私自身もまだこの先のことは迷っているところです。
そのため、離職したり転職したりしている女性が多いことも雑誌やブログを読んで初めて知りました。私自身もまだこの先のことは迷っているところです。
どのようにしたら、女性医師は不妊治療を受けやすくなるでしょうか。
はなねこ先生
根本的なことを言ってしまえば、ここまで全員の仕事が忙しくなければ、一人二人くらい不妊治療で休んでも大した影響はないと思います。しかし、日本の現在の医療体制では、地方の病院はギリギリの人数でキャパシティ以上の業務をこなすしかない状況です。この相対的な医師不足がどうにかならない限り、不妊治療と仕事を完全に両立するのは不可能だと感じています。
なるほど。相対的な医師不足を解消することが必要なのですね。
後編は女性医師が働きやすい環境について考えます!
前編では、はなねこ先生が多忙な勤務をされながら婚活に苦戦し、ご結婚された現在は妊活に奮闘されているお話をお伺いできました。
後編では、医師の仕事のやりがいや、ワークライフバランスの実現のお悩み、さらには女性医師が働きやすくなるための医療現場の改善点を詳しくお聞きします。お楽しみに!
この記事のライター
さき
関東圏の女子医学生。 統計学や疫学に興味があり、将来はPhysician-scientistとして活躍したいと思っています。
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