【アラフォー指導医編】手技やるけど、先生よかったら見学くる？

「先生、今からCVいれるからさ、よかったら見学しない？」

おれは腰を低くして研修医を手技の見学にさそう。イベントに誘っとけば、研修医を教えたことになる。イベントは喋る内容にも困らないし、なんか研修医もやった感を勝手に感じてくれる。 

逆にこういうイベントがないときは放流している。普段の何気ない診療で必要なことを、ひとつひとつを教える指導医なんかいない。なんか派手な手技を見学した。ちょっと手を動かして働いた気になって楽しかった。これだけだ。大事なのは実態としての成長じゃなく、教えた感を演出することだ。研修医が医者として本当の成長しなくても、おれには関係ない。

これが社会人としての最適解であり、おれのコスパが最高になる。たぶん研修医から見たコスパも最高だと思う。

研修医教育は無駄の塊だ。この研修医くんに教えたことは、ほぼ一生使われない。必要と感じてない知識は、決して定着することはないし、知識自体もヨソの科に行ったら要らない。だから教えても全部ゴミ箱に行く。やる気が無い研修医なら100.0％のゴミ箱率だ。

でも何も教えないと怒られるから、あくまで最低限のポーズは取る。でもそこから先は、パワハラとかセクハラのリスクを取ってまでやることじゃない。

おれの師匠は気難しい人だったけど、自分の準備不足で人の時間を奪うなとか、みんな家庭があるんだから残業させんなとか、今では教われないことを色々教えてくれた。今はとてもそんなこと言えないよ。おれにも守るべき生活がある。

少し前までは、デキレジを目指すのが正義だった。それが正義だったから。研修医は闇雲に働いた。宗教みたいなもんだった。でも、教える側も教わる側も気づいちゃった。コスパ悪いよねって。

SNSで人生の最適化情報が得られるようになってからは、短い人生を損なうようなコスパの悪い正義なんか信じなくなった。みんなで最適化をしただけだし、合理的になっただけ。良いことだと思う。

そもそも臨床研修制度って、地域医療の何でも屋を育てるための制度でしょ。みんな都市部の、分業化したところでまったりやりたいんだよ。不慣れなことはやりたくない。田舎なんて人生捨てるようなもん。

だから大半の研修医にとって、２年の研修自体いらないと思う。救急初療と当直を数ヶ月やらせるのと、変わらないよね。

初期研修やめたら医療水準が下がって医療水準は下がる？そんなことはないよ。

まずおれ自身、初期研修で学んだことを今使ってない。覚えてもいない。今使っているのは専門に進んでから、経験と責任とともに身につけたことだけだ。開業医の先生だって、内科やったことないのに内科診療を平気でやってるよね。

だから研修医教育をしなくたって市民への影響はない。そこをツッコむなら、それよりもっと巨悪なところがたくさんある。

だから、研修医に教えてもなんの利益もない。給料も同じ。疲れたり陰口言われたり、マイナスのことが起きるだけ。教えなければゼロ。だれも不幸にならない。教えないのがコスパ最強だから、教えない。おれは悪くない。もちろん、教わらない研修医も悪くない。最適な選択をしているだけだ。 

専門医機構とかj-oslerだって都合のいいように最適化してきたじゃん、末端が最適化して文句言われる筋合いはないよ。

ああ、研修医くんが来た。やる気はなさそうだ。さて今日も笑顔の仮面で研修医にサービスしよう。サービス業には笑顔が大切だ。