後期研修医同士の結婚で避けて通れない「別居問題」について考える
医学生時代、また初期研修医時代の同期などと結婚すると、後期研修医になり、それぞれ違う病院で働くケースがあると思います。状況によっては、週末だけ会える「週末婚」の生活を送ることになる場合も。今回は医師同士夫婦の別居問題について考えます。
目次
私は何者?
医師の結婚と別居問題
医師の結婚で避けて通れないことに「別居問題」があります。例えば、初期研修~後期研修医のどこかで、医学部生時代の同級生や、初期研修の同期と結婚したとしましょう。
後期研修医になり専攻医プログラムに属すると、複数の病院を数ヶ月〜年単位でローテーションすることになります。そのプログラムの要件次第では、県をまたいだ移動も余儀なくされてしまうでしょう。
仮にお互いが同じ医局の異なる診療科であれば、その移動を部長同士で都合を付けてくれるかもしれません。しかし、同じ医局の同じ診療科だと、後期研修医を2人以上、本院以外の同じ病院に同時期に送ることは考えにくいですよね。
ある程度は融通は利くと思いますが(というか利いてしかるべき)、全員が全員、希望通りの人事にすることも難しいので、後期研修医のうちはどうしても単身赴任の必要性が高まる可能性があります。
相手が医者ではなくても同様の問題に直面することも
以上の問題は、相手が医師ではなくとも、配偶者がリモートワークのできない職種であれば同様でしょう。
私は初期研修時代に、地元の同級生と結婚をしました。相手は医師ではありませんが、それでも出社の求められる業種でした。そのため、後期になって安定するまでの1年間以上は別居を余儀なくされてしまいました。初期研修を途中で移動するわけにもいきませんからね。
医者の結婚ピークが働き方の転換点と一致しやすい
そもそも、医師は、医学部卒業、初期研修の終わり、専門医取得付近が結婚のピークとされています。これらは、いずれも働き方の転換点でもあり、それに伴って勤務地もガラッと変わってしまうことが考えられるわけです。
そのため、私もそうでしたが、周囲の結婚をした面々をみていても、新婚早々、医局派遣が終わる半年間別居でした、というケースは少なくないように感じます。また、後期研修医になると忙しくなるケースが多く、土日も当直やオンコールでその地域から離れにくいため、医師同士の夫婦が会うことができる回数はそう多くありません。
知り合いの事例:診療科によって大きく変わる
ここでいくつか知り合いの事例を紹介しましょう。私の同期の Aさんは産婦人科、そのパートナーは循環器内科を選択しました。二人とも優秀で、それぞれの道を諦めたくないという思いから、それぞれの診療科が強い医局・病院のプログラムに属し、後期研修医を続けています。関東圏内とはいえ、片道2時間かかる遠距離恋愛を続けています。そのうえ、産婦人科と循環器という、24時間オンコールも多い診療科同士のため、会えない月もあるそうです。
一方で、初期研修医時代の小児科に進んだ先輩は、放射線科に進んだ方と結婚をされました。放射線読影を中心にされているようで、土日が休みのことが多いことから、一方が他方の宿舎に出向き、会う機会を増やしているそうです。
自治医大の事例:結婚協定
ここで、特殊な事例をご紹介しましょう。栃木県に本籍を置く自治医科大学は、卒業生が、採用された地元の都道府県で、卒後9年間勤務することが求められます。
しかし、自治医科大学同士の異なる出身の学生同士が結婚をした場合、その9年間を「X年は一方の都道府県で、9-X年は他方で」といった配分にする「結婚協定」なるものが存在するようです。
これによって、結婚をした医師同士が、異なる都道府県で9年間過ごす、という無理ゲーな状態を防ぐことができるようになっているわけです。
計画的な夫婦の将来設計を
結局のところ、医師同士や、共に出社や異動が求められる者同士が結婚をしたら、1) どちらかが家庭生活を優先した働き方をする、2) 2人ともしばらくはキャリアを優先して家庭生活は最低限にする、のいずれかになるのでしょう。
私の先輩のD先生は、SNSで同級生の子育て投稿を見るたびに悩むと話してくれました。パートナーと同じ病院に移ることを考えたものの、どちらかが専門医の取得を諦めなければならない状況に。結局、キャリアを優先する決断をしたそうです。
しかし、こうした状況は永遠に続くわけではありません。現在のシステムの範疇では、専門医を取得すれば、勤務先の選択肢は大きく広がります。実際、先輩のE先生ご夫妻は、7年間の別居を経て、現在は同じ市内の病院で働いています。「あの時期を乗り越えたからこそ、今の充実感がある」と言っていました。
医師同士の結婚には、確かに大きな課題があります。しかし、お互いの仕事を理解し合え、将来的なパワーカップルとして経済的安定も見込めるというメリットもあります。実際、医師の共働き世帯の平均年収は3,000万円を超えることも珍しくありませんし。
一時的な別居は確かに辛いものですが、長期的な視点で見れば、それぞれの専門性を活かしながら理想的な家庭生活を築くことは十分に可能です。現在、遠距離結婚で悩む医師カップルも、必ずその先に光は見えてくると思いますよ。
この記事のライター
Dr.パンダ
地方出身、中高は公立で東京大学に入学し、医学科に進学して令和X年に卒業しました。現在は、地方の急性期病院にて勤務しています。ひとりの若手医師として心の内をリアルにお届けできればと思います。
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