後期研修医同士の結婚で避けて通れない「別居問題」について考える

医学生時代、また初期研修医時代の同期などと結婚すると、後期研修医になり、それぞれ違う病院で働くケースがあると思います。状況によっては、週末だけ会える「週末婚」の生活を送ることになる場合も。今回は医師同士夫婦の別居問題について考えます。

後期研修医同士の結婚で避けて通れない「別居問題」について考える

目次

  1. 私は何者?
  2. 医師の結婚と別居問題
  3. 相手が医者ではなくても同様の問題に直面することも
  4. 医者の結婚ピークが働き方の転換点と一致しやすい
  5. 知り合いの事例:診療科によって大きく変わる
  6. 自治医大の事例:結婚協定
  7. 計画的な夫婦の将来設計を

私は何者?

Dr.パンダ
Dr.パンダ
20代男性医師。都内の大学を卒業。現在も首都圏の急性期総合病院で医師として働きながら、副業でiCoiライターやエンジニアとして仕事をしています。私は初期研修のときに、医師ではない妻と結婚し、しばらく遠距離生活をしていたことがあります。

医師の結婚と別居問題

医師の結婚で避けて通れないことに「別居問題」があります。例えば、初期研修~後期研修医のどこかで、医学部生時代の同級生や、初期研修の同期と結婚したとしましょう。

後期研修医になり専攻医プログラムに属すると、複数の病院を数ヶ月〜年単位でローテーションすることになります。そのプログラムの要件次第では、県をまたいだ移動も余儀なくされてしまうでしょう。

仮にお互いが同じ医局の異なる診療科であれば、その移動を部長同士で都合を付けてくれるかもしれません。しかし、同じ医局の同じ診療科だと、後期研修医を2人以上、本院以外の同じ病院に同時期に送ることは考えにくいですよね。

ある程度は融通は利くと思いますが(というか利いてしかるべき)、全員が全員、希望通りの人事にすることも難しいので、後期研修医のうちはどうしても単身赴任の必要性が高まる可能性があります。

相手が医者ではなくても同様の問題に直面することも

以上の問題は、相手が医師ではなくとも、配偶者がリモートワークのできない職種であれば同様でしょう。

私は初期研修時代に、地元の同級生と結婚をしました。相手は医師ではありませんが、それでも出社の求められる業種でした。そのため、後期になって安定するまでの1年間以上は別居を余儀なくされてしまいました。初期研修を途中で移動するわけにもいきませんからね。

Dr.パンダ
Dr.パンダ
そういうわけで、別居しているときは、月に2回程度しか会うことができませんでした。そのため、入籍をした自覚が生まれないまま日々が経過していたことを覚えています。

医者の結婚ピークが働き方の転換点と一致しやすい

そもそも、医師は、医学部卒業、初期研修の終わり、専門医取得付近が結婚のピークとされています。これらは、いずれも働き方の転換点でもあり、それに伴って勤務地もガラッと変わってしまうことが考えられるわけです。

そのため、私もそうでしたが、周囲の結婚をした面々をみていても、新婚早々、医局派遣が終わる半年間別居でした、というケースは少なくないように感じます。また、後期研修医になると忙しくなるケースが多く、土日も当直やオンコールでその地域から離れにくいため、医師同士の夫婦が会うことができる回数はそう多くありません。

Dr.パンダ
Dr.パンダ
さまざまな病院を回り経験を積むことができる専攻医プログラムですが、医師同士の結婚とは相容れない性質も持っているのではないでしょうか。

知り合いの事例:診療科によって大きく変わる

ここでいくつか知り合いの事例を紹介しましょう。私の同期の Aさんは産婦人科、そのパートナーは循環器内科を選択しました。二人とも優秀で、それぞれの道を諦めたくないという思いから、それぞれの診療科が強い医局・病院のプログラムに属し、後期研修医を続けています。関東圏内とはいえ、片道2時間かかる遠距離恋愛を続けています。そのうえ、産婦人科と循環器という、24時間オンコールも多い診療科同士のため、会えない月もあるそうです。

一方で、初期研修医時代の小児科に進んだ先輩は、放射線科に進んだ方と結婚をされました。放射線読影を中心にされているようで、土日が休みのことが多いことから、一方が他方の宿舎に出向き、会う機会を増やしているそうです。

Dr.パンダ
Dr.パンダ
診療科によってプライベートに割ける時間が違いすぎるのは大きな問題があると思います。

自治医大の事例:結婚協定

ここで、特殊な事例をご紹介しましょう。栃木県に本籍を置く自治医科大学は、卒業生が、採用された地元の都道府県で、卒後9年間勤務することが求められます。

しかし、自治医科大学同士の異なる出身の学生同士が結婚をした場合、その9年間を「X年は一方の都道府県で、9-X年は他方で」といった配分にする「結婚協定」なるものが存在するようです。

これによって、結婚をした医師同士が、異なる都道府県で9年間過ごす、という無理ゲーな状態を防ぐことができるようになっているわけです。

Dr.パンダ
Dr.パンダ
結婚協定なるものがなかったら、自治医科大学出身の先生方は結婚の障壁が今よりもっと高くなることと思います。

計画的な夫婦の将来設計を

結局のところ、医師同士や、共に出社や異動が求められる者同士が結婚をしたら、1) どちらかが家庭生活を優先した働き方をする、2) 2人ともしばらくはキャリアを優先して家庭生活は最低限にする、のいずれかになるのでしょう。

私の先輩のD先生は、SNSで同級生の子育て投稿を見るたびに悩むと話してくれました。パートナーと同じ病院に移ることを考えたものの、どちらかが専門医の取得を諦めなければならない状況に。結局、キャリアを優先する決断をしたそうです。

しかし、こうした状況は永遠に続くわけではありません。現在のシステムの範疇では、専門医を取得すれば、勤務先の選択肢は大きく広がります。実際、先輩のE先生ご夫妻は、7年間の別居を経て、現在は同じ市内の病院で働いています。「あの時期を乗り越えたからこそ、今の充実感がある」と言っていました。

医師同士の結婚には、確かに大きな課題があります。しかし、お互いの仕事を理解し合え、将来的なパワーカップルとして経済的安定も見込めるというメリットもあります。実際、医師の共働き世帯の平均年収は3,000万円を超えることも珍しくありませんし。

一時的な別居は確かに辛いものですが、長期的な視点で見れば、それぞれの専門性を活かしながら理想的な家庭生活を築くことは十分に可能です。現在、遠距離結婚で悩む医師カップルも、必ずその先に光は見えてくると思いますよ。

iCoiのiOSインストールはこちら!
Android版はこちら!
Dr.パンダ

この記事のライター

Dr.パンダ

地方出身、中高は公立で東京大学に入学し、医学科に進学して令和X年に卒業しました。現在は、地方の急性期病院にて勤務しています。ひとりの若手医師として心の内をリアルにお届けできればと思います。

この記事へコメントしてみる

※コメントは承認後に公開されます
コメント投稿ありがとうございます。
コメントは運営が確認後、承認されると掲載されます。

関連記事

医師を狙うなら医学生がおすすめ!多様なキャリアで人生も大きく広がる!

Dr. パンダのなんでもトーク

医師を狙うなら医学生がおすすめ!多様なキャリアで人生も大きく広がる!

医師との結婚を考える方は、あまり医学生との恋愛を考えたことがないかもしれません。しかし、忙しい医師との恋愛は苦戦しがちです。そこで注目したいのが医学生との出会い。最近の医学生は、まさに令和スタイルで、これまでになかった多様なキャリアの可能性を秘めています。

医師ならみんな共感できるはず!オンコールのときの辛いこと4選!

Dr. パンダのなんでもトーク

医師ならみんな共感できるはず!オンコールのときの辛いこと4選!

医師のオンコール待機は、多くの医師にとって避けられない業務の一つです。一見自由な時間に見えますが、実は様々なストレスを抱えながらの待機時間となっています。今回は、現役医師である筆者の体験を交えながら、多くの医師が共感できるオンコール時の悩みについて紹介します。

中高の同級生の子育てラッシュに思うこと。医師として、夫として。

Dr. パンダのなんでもトーク

中高の同級生の子育てラッシュに思うこと。医師として、夫として。

どうもDr.パンダです。最近、インスタグラムで中高の同級生の出産ラッシュがやってきました。毎月1人は子どもが生まれている投稿を見ている気がします。そのたびに若干複雑な気持ちになります。今日は医師なら共感できる子どもの問題について語っていきます。

医師の食事中のトークテーマ、要注意!〜恋愛に大影響する会話術〜

Dr. パンダのなんでもトーク

医師の食事中のトークテーマ、要注意!〜恋愛に大影響する会話術〜

食事中の会話は関係構築において重要な要素です。しかし、医師は人体や疾患に慣れ親しんでいるため、食事中の会話に配慮が足りないことがあります。今回は、医師の食事中のトークテーマについて、医師である私が普段感じていることをお伝えしようと思います。

医学部なのに全然モテない!?そんなあなたは闘い方を変えてみよう!

Dr. パンダのなんでもトーク

医学部なのに全然モテない!?そんなあなたは闘い方を変えてみよう!

医学部に入学したら、モテモテの日々が待っている...そう思っていた人も多いのではないでしょうか?しかし、現実はそう甘くありません。今回は、意外と恋愛市場で苦労しやすい男子医学生の恋愛攻略法を考察していきます。

医師との結婚を考えるなら、医学生時代にアプローチするのがおすすめ!

Dr. パンダのなんでもトーク

医師との結婚を考えるなら、医学生時代にアプローチするのがおすすめ!

医師と結婚したい場合、アプローチは「医師になってから」と考えがちですが、実は医学生の時期こそチャンスだと思っています。本記事では、なぜ医学生時代からのアプローチがおすすめなのか、そのメリットと具体的な方法について詳しく解説します。

非常勤だけではない!?医師免許を活かして多種多様な副業をしよう!

Dr. パンダのなんでもトーク

非常勤だけではない!?医師免許を活かして多種多様な副業をしよう!

医師の副業といえば、非常勤勤務やオンライン診療を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、医師の副業の世界は実に多様で、意外な高収入の機会が隠れています。本記事では、一般にはあまり知られていない医師の副業の実態に迫ります。

タワマン高層階住みはCPAの蘇生率ゼロ?タワマンあるあるの真相に迫る

Dr. パンダのなんでもトーク

タワマン高層階住みはCPAの蘇生率ゼロ?タワマンあるあるの真相に迫る

こんにちは。Dr.パンダです。今回は、誰しも一度は憧れるタワーマンション(以下、タワマン)について、よく耳にする「あるある」や噂の真相に迫ってみたいと思います。一部は面白おかしく描かれているだけのフィクションもあるでしょうが、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

医師が教える!最高の作業環境を作るためのデスク周り必須アイテム

Dr. パンダのなんでもトーク

医師が教える!最高の作業環境を作るためのデスク周り必須アイテム

みなさん、パソコンやデスク環境にはどれくらいこだわってますか?今回は、私が実際に使用して効果を実感している、デスク周りの必須アイテムをご紹介します。医療従事者だけでなく、長時間のデスクワークをされる方にもおすすめですよ。

医師よ、AI革命に乗り遅れるな! - 最新LLMが変える診療の未来

Dr. パンダのなんでもトーク

医師よ、AI革命に乗り遅れるな! - 最新LLMが変える診療の未来

こんにちは、Dr.パンダです。医師兼エンジニアの私から、同業の皆さんに警鐘を鳴らします。今回のテーマは「最新のLLM(大規模言語モデル)を活用した診療・研究の革新」です。

関連するキーワード

Dr. パンダのなんでもトークの人気記事

人気ランキング

話題のキーワード