地域枠ってどんな制度?鍵になるのは医師のワークライフバランス支援
近年、医学部人気に伴い注目されている医学部の地域枠。卒後9年間の指定地域勤務を条件に、入学のしやすさと金銭的な支援が行われています。今回は地域枠の制度とそのメリット、そして今まで取り上げられてこなかった課題についてもご紹介します!
目次
地域枠出身者は医学部全体の約2割
医学部の地域枠制度[1]は、2008年に新設された制度です。大学を卒業後、特定の地域、診療科で診療することを前提とした選抜枠で、二次医療圏間、都道府県間、診療科間の医師偏在を調整することが期待されています。
地域枠は比較的新しい制度ではありますが、既に医学部全体の定員の約2割を占めています。一般受験枠出身の医師と比べ、地域枠出身の医師は地域定着率が高く、設立の意図に合致した運用がされているといえるでしょう。
地域枠のメリットは入学のしやすさとと金銭的支援
地域枠入試は、主に次の二つのメリットから地元志向の方から高い人気を誇っています。
一般受検より入学しやすい
地域枠で医学部を受験する条件としては、(1)その大学がある都道府県の出身であること、(2)卒後に在学年数の1.5倍(一般的には9年)の間、指定された地域の病院で勤務すること、の2つが一般的です。
この条件が課される代わりとして、地域枠入試の難易度は平易な傾向にあります。大学にもよりますが、面接のみ、共通テストで一定の点数に達すれば合格、といった制度となっているようです。
返済不要の奨学金がある大学も
金銭的な支援も地域枠の大きなメリットの一つです。地域枠を設けている大学によっては、医学部在学期間に返済不要の奨学金が付与される仕組みが存在します。
大学によっては月に10万円前後支給される大学もあり、学生にとっては非常に助かる仕組みといえます。
働き方の柔軟性には課題が残る
とはいえ、地域枠入学者にとって良いことばかりではありません。ここでは地域枠の課題についても少しだけご紹介します。
進路変更の難しさ
この例のように、入学時と高学年・卒後になってからの進路の希望が変わることは珍しい話ではありません。しかし、地域枠で入学してしまうと、卒後9年間は自由な進路選択をすることが難しくなります。
診療科選択や専門医取得に制限も
医師数のバランスによっては、初期研修後に一部の診療科を選択できないことが起こりえます。過去には、そうした状況に不満を覚えた若手医師が地域枠を離脱する例もみられたようです。
厚生労働省は地域枠出身の医師が不当に地域枠を離脱した場合、その医師を採用した病院への補助金が減額されるといった対応を取っています。また、今後は地域枠を離脱した医師の専門医取得に制限を設けたり、採用した病院の臨床研修病院の認定を取り下げるといった対策も検討されているようです。
影響はキャリアだけではなくプライベートにも
さて、前段で示したようなネガティブな言葉で検索して出てくるサイトは、「希望した診療科を選択できない」「奨学金を返済して県外の病院で働きたいが、利子や違約金が高すぎて現実的でない」いったキャリアにまつわることに言及されていることがほとんどです。
しかし、地域枠の影響を受けるのは地域枠入学者のキャリアだけではありません。例えば、結婚。パートナーに合わせて将来の選択肢がある程度決まってしまう、となるとそこにためらいを感じる方もいるでしょう。地域枠の恋人との結婚を迷い、別れることになる、というケースは決して珍しいことではないようです。
こうした状況を踏まえ、大阪府では、専属のキャリアコーディネーターが付き、個別に進路相談に乗ったり、地域枠入学の学生を対象としたセミナーや講義、説明会を開くといった独自の制度を設けることによって、地域枠入学者のサポートを図っています。
地域枠出身者のプライベート支援が要に
地域枠で入学するということは、キャリアや金銭面だけではなく、その後のプライベートにも大きく関わってきます。しかし、どのようにプライベートに影響したのかは、その性質上、あまり表立って語られにくいのが現実です。
今後のiCoi Blogでは、実際に地域枠に在籍中の方、理由に結婚を躊躇した経験がある方へお話をうかがい、その情報を発信させていただきたいと考えています。
インタビューに応じてくださる方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームまでご連絡いただけましたら嬉しいです。是非お待ちしております!
参考
- 厚生労働省. 「令和4年度以降の医学部定員と地域枠について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000683719.pdf)
この記事のライター
Yuriko
iCoi女性ライター。医学生として医学を学びつつ、医師、特に女性医師のキャリアについての記事を執筆していきたいです。
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