【医師不足の真相】地域医療崩壊の危機!その原因と対策を徹底解説

日本の医療現場で深刻化する「医師不足」問題。都市部と地方の格差が広がり、地域医療の崩壊が懸念されています。なぜこのような事態に陥ったのか、その背景と対策を探ります。

【医師不足の真相】地域医療崩壊の危機!その原因と対策を徹底解説

目次

  1. 医師不足の実態:数字で見る深刻な状況
  2. 医師不足はなぜ起こった?歴史的背景を紐解く
  3. 地域医療を守る:さまざまな対策と今後の展望
  4. 医師不足解消への道のり:課題と展望

医師不足の実態:数字で見る深刻な状況

厚生労働省の2020年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、日本の医師数は約33.9万人です。人口1000人当たりの医師数は2.5人となっており、OECD加盟国の平均3.6人(人口1,000人当たり)を下回っています。

地域間格差も顕著です。同統計によれば、人口10万人当たりの医師数は、最多の徳島県(338.4人)と最少の埼玉県(177.8)で約1.7倍の開きがあります。この格差は、地域医療の質に直接影響を与えているといえるでしょう。

医師不足はなぜ起こった?歴史的背景を紐解く

1. 新臨床研修制度の導入(2004年)

従来、大学卒後の医師は、基本的に自身の大学医局にそのまま入り、大学医局を支える仕組みとなっていました。これは、大学医局の人数を担保し、ひいては関連の地域病院に医師を派遣する重要な役割を担っていました。

しかし、新臨床研修制度(スーパーローテート制度)が始まり、卒後の研修医が自身の志願する病院で研修をするようになりました。すると、この影響で医局に所属する医師が減少。地域への派遣が困難になり、むしろ地域から医師を引き上げる事態が発生しました。

日本医師会の調査によると、2006年から2008年の間に、全国の公立病院の約4割が常勤医師の減少を経験しているようです。

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スーパーローテート制度は研修医の質を担保するための制度である一方、医師の派遣構造を根本的に変えてしまう要因になりました。

2. 医療訴訟の増加と診療科の偏在

最高裁判所の統計によれば、医事関係訴訟の新受件数は1992年の371件から2004年には1,110件まで増加しました。この医療訴訟リスクの高まりにより、産婦人科、小児科、救急科などの診療科から医師が離れる傾向が強まりました。

厚生労働省の調査では、2018年時点で小児科医は全医師の約4.9%、産婦人科医は約3.5%にとどまっており、特定の診療科での医師不足が深刻化しています。

地域医療を守る:さまざまな対策と今後の展望

1. 地域枠制度の拡充

医学部入学時に地域医療への従事を条件とする「地域枠」の導入が進んでいます。文部科学省の調査によると、2020年度の医学部入学者のうち、地域枠は18.2%(1,679人)まで増加しました。

しかし、課題も存在します。日本医学教育評価機構の報告では、地域枠学生の中には卒業後に義務を果たさないケースも見られ、制度の実効性向上が求められています。

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若手医師の目線に経つと、卒後も特定の地域での労働に制限されることをデメリットと捉えられなくもありません。しかし、地域医療を支えるためには、致し方ない政策なのでしょう。

2. 医師偏在指標の導入

医師不足対策として、医学部定員の増加も実施されています。文部科学省の資料によれば、2008年度から段階的に定員を増やし、2020年度には9,330人まで拡大しました。これは2007年度の7,625人と比較して約22%の増加です。

ただし、医師養成には時間がかかるため、即効性のある対策とはいえません。また、医療の質の維持も重要な課題となっています。

そこで、2019年、厚生労働省は新たな「医師偏在指標」を導入しました。この指標は、地域ごとの医療ニーズや人口構成を考慮し、より実態に即した医師の配置を目指すものです。具体的には、人口10万人当たりの医師数だけでなく、性別・年齢別人口や医療需要、医師の性別・年齢分布なども考慮に入れています。これにより、各地域の実情に応じた医師確保対策の立案が可能になりました。

3. 遠隔医療の推進

ICT技術の発展により、遠隔診療の可能性が広がっています。特に過疎地域での医療アクセス改善に期待が寄せられています。厚生労働省の2021年の調査によると、遠隔診療を実施している医療機関は全体の約15%に達しています。COVID-19パンデミックを契機に、さらなる普及が見込まれています。

医師不足解消への道のり:課題と展望

医師不足問題の解決には、さまざまな取り組みが必要です。地域枠制度や医学部定員増加の効果が現れるまでには時間がかかるため、短期的・中期的な対策も重要です。

また、働き方改革による勤務環境の改善や、タスクシフティングによる業務効率化など、医師の負担軽減策も進められています。厚生労働省は2024年度から医師の時間外労働規制を導入する予定で、これにより過重労働の解消が期待されています。

そのほか、AIやロボット技術の活用による医療の効率化も注目されています。例えば、画像診断支援AIの開発が進んでおり、医師の診断精度向上と業務効率化に貢献することが期待されています。

一方で、新たな課題も浮上しています。医師の地域間・診療科間の偏在是正や、医療の質の維持向上、医療費の適正化などが挙げられます。これらの課題に対しては、継続的な政策評価と改善が必要です。医師不足問題は、日本の医療体制の根幹に関わる重要な課題です。地域医療を守り、すべての人が適切な医療を受けられる社会を実現するため、政府、医療機関、そして私たち一人一人が問題意識を持ち、解決に向けて取り組んでいく必要があります。

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