医学生必見、泣く子も黙るブランド病院!ブランド病院の功と罪②
全国に名を轟かせる病院である「ブランド病院」。病院名を聞いたことがあっても、実態は意外と知られていない部分も。ブランド病院で初期研修をした筆者から見たメリットとデメリットの私見を述べます。
※本記事は特定の病院の具体的な研修内容を述べたものではありません
私は何者?
ブランド病院のデメリットはお金
前回の記事ではブランド病院のメリットについて記載しましたが、当然ながらデメリットも存在します。
最も大きなデメリットは給料の低さです。医学生の時点では実感しづらいかもしれませんが、教育には多大なコストがかかります。
例えば、レクチャーや症例検討会を実施する際、本来なら検査業務で病院の収益に貢献できたはずの指導医クラスの医師を一定時間拘束することになります。これは病院にとって大幅な収益減少を意味します。また、レクチャーを受ける研修医側にも、その時間の給料が支払われています。
つまり、研修医全員を集めて1時間のレクチャーを行うだけで、病院は実質的に10万円以上の人件費や売上の損失を被る可能性があります。
さらに、外部講師への講演料や院内ジャーナルの整備など、直接的な支出も発生します。加えて、病棟や外来業務においても、研修医への丁寧な指導時間は業務効率の低下を招き、収益面でマイナスとなります。
このような教育コストを補うため、臨床研修病院には補助金が支給されていますが、一般的な想定を超える教育を提供すれば、それだけ病院の負担は増大します。結果として、研修医の給料を抑制せざるを得ない状況となります。言わば、本来得られたはずの給料の一部を教育費用として支払っているような形です。
初期研修の2年間において、給料だけが重要な要素ではありませんが、同地域の他病院と比較して給料が低い分、それに見合う教育が受けられるかどうかは慎重に検討すべきでしょう。
やっぱり超忙しいブランド病院
ブランド病院の2つ目の大きなデメリットは、過度な労働負荷です。一般的にブランド病院は多忙な傾向にあります。圧倒的な症例数を経験できる一方で、厳格なカンファレンスへの準備や学会発表、院内発表など、業務量が膨大です。その分野での成長は望めるものの、過重な負担により心身を病み、退職に至るケースも少なくありません。
初期研修では、出勤さえ継続できれば基本的に修了は可能です。しかし、後期研修以降はより厳しい基準が設けられており、規定の勤務年数を満たしても、必要なレポートや学会発表などの要件を満たせなければ専門医資格の取得は困難となります。そのため、ブランド病院で7〜10年の修練を積み、優れた臨床能力を身につけながらも、多忙さゆえに専門医資格を持たない医師も存在します。
専門医資格がなくとも、優れた臨床医として活躍することは可能です。しかし、キャリアステージの進展に伴い転職や院内での昇進を考える際、いかに優れた実力を持っていても、資格がないことで不利な立場に置かれることがあります。これは大きなデメリットと言えるでしょう。
そのため、志望する病院を選択する際は、以下の点を慎重に検討する必要があります:
- その病院の労働環境で2年間の初期研修を完遂できるか
- 後期研修以降も継続する場合、専門医資格取得に必要な要件を満たすことができるか
病院内の寮は注意ポイント
前述の忙しさにも繋がる部分ですが、「病院内の寮」や「病院に併設された寮」は、一つの注意すべきポイントかもしれません。
昔の初期研修では主治医制の病院も多く、自分の担当患者のことで呼び出しがあれば、休日夜間を問わず対応しなければならない状況でした。働き方改革が進んだ昨今ではそのようなシステムは減ってきていますが、全員が院内の寮や病院と隣接した寮に住んでいる病院では、研修医が遅くまで残って働くことが常態化していたり、気になる患者がいれば呼び出してもらうような文化が残っている病院もあります。
もちろん、寮が近いことには大きなメリットもあります。通勤時間の節約ができ、研修に集中できる良い環境であることは間違いありません。しかし、このような環境は病院の「ハイパーさ」を示す一つの特徴になり得ると考えています。
ブランド病院とはいえ病院によって様々
病院の特徴は、実際には「ブランド病院」という枠組みだけでは語れないほど多様です。ブランド病院であっても、前述したようなデメリットが少なく、給与水準が高い病院や、比較的余裕のある勤務体制の病院も存在します。
教育に関しても、その熱意や方法論は病院ごとに大きく異なります。さらに、同じ病院内でも診療科によって雰囲気は全く異なることがあります。また、同じ環境で研修を受けても、個人との相性によって成長度合いに差が出ることも珍しくありません。
そのため、「ブランド病院」という名称にとらわれすぎることは得策ではありません。むしろ、それを病院選びの一つの手がかりとして捉え、以下のような行動を取ることをお勧めします:
- 実際に病院の説明会や病院見学に参加する
- 現場の研修医の声を直接聞く
- 自分の志向や価値観と照らし合わせる
ブランド病院で初期研修した感想
私は所謂「ブランド病院」で初期研修を経験しましたが、確かに前述のような厳しい面も数多くありました。当時は現在よりも働き方改革が緩やかで、深夜まで働いた翌日も早朝から勤務するような状況も珍しくありませんでした。また、給与面でも近隣の病院と比べて明らかに低く、時には寂しい思いをすることもありました。客観的に見れば、コストパフォーマンスの観点からは決して効率的とは言えない2年間だったかもしれません。
しかし、その病院に憧れて全国から集まった同期や先輩、後輩たちと過ごした日々は、かけがえのない充実した時間でした。共に切磋琢磨し、高め合える仲間との出会いは、私の医師としての成長に大きな影響を与えてくれました。そのため、自分の初期研修先の選択を後悔したことは一度もありません。
これから研修先を選ぶ皆さんには、立地や給与、労働時間の軽さだけでなく、2年間の成長という観点から「ブランド病院」も選択肢の一つとして検討していただければと思います。そこには、きっと皆さんの医師としてのキャリアを豊かにする何かがあるはずです。
この記事のライター
joslerの犬
「内科専攻医。X(旧Twitter)で医学生・若手医師向けのライフハックや勉強法を発信し、約5000人のフォロワーから反響を得る。英検1級、仏検2級、スノーボードインストラクター資格を取得しており多彩なトピックについて発信。 Twitter→https://x.com/wankosobanyan note→https://note.com/maitakenorth/
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