【論文紹介】女性医師の場合、患者の死亡率と再入院率が低下する!?
今回は、女性医師による診療が患者の死亡率と再入院率を低下させる可能性を示した論文をご紹介します!男性医師と比べて、女性医師による診療により、患者のアウトカムにはどのくらいの差が生まれるのでしょうか。また、その結果にはどんな理由が考えられるのでしょうか。
目次
今回紹介する論文
今回ご紹介するのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部・公衆衛生大学院 准教授の津川友介氏らが発表した、女性医師と男性医師が治療した際の内科系疾患の患者の予後比較に関する論文です。
女性医師はガイドラインを遵守する傾向がある
この研究の背景として、一般に男性医師と比較して、女性医師は臨床ガイドラインとエビデンスに基づく診療を遵守する可能性が高いという先行研究があったと述べられています。
しかし、実際に担当医の男女差が患者の転帰にどのような影響が現れているかは明らかではありませんでした。そこで今回、津川氏らは、担当医の男女差による患者の死亡率と再入院率を検証しました。
女性医師の場合、患者の死亡率と再入院率が低下
この研究は、2011年から2014年までの米国全土で内科系疾患により入院した65歳以上の150万人の高齢者が対象となりました。具体的には、入院中のメディケア受給者の全国サンプルのデータを利用しています。
患者の重症度や病院の違いの影響を考慮した上で、内科担当医が男性の場合と女性の場合について、患者の院内死亡率と再入院率を比較しました。
すると、担当医が女性である場合、死亡率と再入院率がそれぞれ3~4%低下する結果となりました。
津川氏らの考察は?
この研究によると、女性の内科医によってケアされた高齢の入院患者は、男性の内科医によるケアを受けた患者に比べて、30日以内の死亡率と再入院率が低いという結果でした。この傾向はさまざまな病状や患者の重症度に関わらず一貫していました。
また、女性医師は男性医師と比較してエビデンスに基づいた医療を実践する可能性が高く、標準化された試験で同等またはそれ以上に良好な成績を収め、より患者中心のケアを提供するという先行研究があります。
今回の結果と先行研究により、男性医師と女性医師が異なるケアの実践をしている可能性があり、その違いが患者のアウトカムに重要な影響を与えている可能性があることを示唆しています。
女性医師に関する論文のインパクトが世界第三位に!
英国の調査会社「Altmetric」は、世界で影響を与えた2017年の論文トップ100を発表しました。このランキングの中で、この論文が、日本人としては最高の三位に選ばれました。
女性医師へのサポートの充実は、患者の予後改善につながる?
したがって、患者の予後を改善するためには、女性医師が適切に働ける環境を整えることが重要だと言えます。
これからもiCoi Blogでは、女性医師のキャリアやライフプランをサポートするための情報を発信し続けます!
この記事のライター
さき
関東圏の女子医学生。 内科系、統計学や疫学に興味があります。
この記事へコメントしてみる
コメントは運営が確認後、承認されると掲載されます。